荒野の恋 第二部

荒野の恋 第二部 bump of love (ファミ通文庫)

荒野の恋 第二部 bump of love (ファミ通文庫)

「恋は女をこどもに、男を地下組織にする」
ぇ、何これ。何言っちゃってるの桜庭さん?と思った。思ったが、読めば解る。全然おかしなこと言って(書いて)ない、桜庭さんは。
さておき、本文が200頁ちょいでうすーい!でも内容充実。
砂糖菓子と言い、この御方は本当に少ない分量にも色々ぶち込んでくれるなぁ。
第一部が十二歳。今回が十三〜十四歳における話。
この年代が主役となる恋愛小説は多いけれど、この年齢設定は結構低い方なんじゃ?


さて、話の方は彼と彼女が居なくなった家での暮らしにも慣れてきた頃。
「まだ大人じゃない」と「もう大人だから」の間を揺れ動く、人生において最も慈しむべき時間*1が描かれる。
この作品は読み手にすんなり入ってくるのがいい。
判り易く言い換えると、衒いや不自然さがないから違和感も覚えない。
現に、第二部を読みはじめるまで第一部の成り行きをほとんど覚えてないと思ったけれど、いざ読み始めたら沸々と記憶が湧いてきて
「あぁ何だ、忘れてなんかなかったんだ…。ちゃんと頭に浸透して残ってたな。」という実感を強くもった。
それと、これは子供サイドと並行して大人サイドの模様も書かれる作品なんだけれど、
第一部では家政婦に、そして今回では(俺が)前は敵として認識していたはずの義母の肩を持ちたくなるよう読者の意識をスライドさせるのも巧い。
やっぱり中立よりもどちらか或いは誰か味方としてあった方が感情移入しやすいから、これは結構大事なこと。
次の第三部で完結。今度は十七歳だそうです。

*1:こういうことを言い出すってことは俺ももう03ですよ えぇ、まだ22ですけれど