海の底(再読) 

海の底

海の底

あらすじは各所で把握できるので割愛し、再読なので感想も省略。
じゃあ何を書こうかってことで、推薦文でも書こうかと。俺の拙い文章じゃ逆効果な恐れもあるけど。


本作は二方面の魅力を備えた一大エンターテイメント作品。それこそ映画の原作本に匹敵する。
人死にから心因性の障害まで盛り上げに一役買える要素はあざとかろうが何だろうがフル活用。
こう書くと聞こえは悪いだろうが、おかげでストーリーの盛り上がりは最高潮。
魅力の一つは艦の外で展開する死闘。そして大人の駆け引きとも評すべき国防論。机の上で錯綜する思惑と現場の想い。端的にいって“熱い”!
もう一方は艦内の人間ドラマ。憎まれ役の典型が話を面倒な方へとぐんぐん加速。そして不器用な青年と少女の微妙な関係はもどかしくもあり…。
はやくも何書いてるんだか分からなくなった。話をかえよう。


認識の齟齬が生じることを承知の上で大雑把に喩えると『踊る大捜査線』の魅力と本作の魅力は直結する。
本庁と所轄、タテ割り制度が故に正しいとわかっていても“できないこと”。上層の日和見と現場の苦闘。
そして所轄内の人間模様。踊るシリーズでは所轄内の人間関係は平穏そのものだったけど、入庁前の雪野とかは正にってカンジ。


人それぞれ魅力を見出す点は違うだろうけれど、様々な魅力で溢れている『海の底』。
決して安くはないけど買って後悔はしないはずだから、興味はあったが読むのを先延ばしにしていた人は今すぐ読もう。
そうでない人にもこれを機に興味をもってもらえたら最高だけど、こんな推薦文じゃあ難しいか(笑)。
まあでも、一般文芸じゃ出せないものをやるためのライトノベルから、先祖返りしてハードカバー出版を果たした電撃作品の中にあって、その成功を語る上でこれほど適した作品もないかと思う。
十二分に一般文芸で通用する作品なのは確かだ。
ちなみに俺は“外”の熱い展開が特にお気に入り。機動隊の奮迅ぶりに反して降りかかるやるせなさともどかしさは言い表せない感動を与えてくれる。
 「隊長!要救助者は俺たちを見ていますッ!」
無駄だとわかっていても、それでも見捨てるわけにいくか。俺たちが手を差し伸べてやらねば…。
あぁ、もう泣けてくるなぁ。熱すぎる。
冗談抜きで、持ち前の角川力でもって映画化しないかな。制作費100億あっても難しそうだけど。
BNFみたく株で数百億儲けて出資すればあるいは…。