スプライトシュピーゲル 2
スプライトシュピーゲル II Seven Angels Coming (2) (富士見ファンタジア文庫 136-9)
- 作者: 冲方丁,はいむらきよたか
- 出版社/メーカー: 富士見書房
- 発売日: 2007/07/01
- メディア: 文庫
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- ココにうるうる :誓い「オレがなってやるよ。ミョーオーサマのワザモノに。必ず、だから──」(335頁)
扉絵が乙だった事にここで納得した気がする。
もうひとつのシュピーゲル第2巻。
物語の概要は既に更新済みのオイレン2巻の方にありますので割愛。
こちらはオイレンの犬三人属するBVTの下部組織MSSの面々と妖精三人の視点から件の事件について描写されています。
今回は併せてひとつの話となっている色が強いので、あちらとこちらの違いについての言及を主に。
まず、当たり前ですが登場人物が違います。
これは何もテロを阻止する治安機構側だけの話ではなく*1、テロを画策・実行する側にも違いがあります。
向こうで登場した重要人物がこちらでは一切、影も形も名前すら出てこなければ、あちらに出てこない人物でありながら重要な役割を持っている人物がこちらに登場していたりします。
次に、事件解決への過程の描かれ方が違います。
オイレンが比較的順序立って“真相”に迫っていったのに対し、こちらは状況への対処が主とされ、対処対処を繰り返すことで解決へ至っている色が強いです。
これはやはりオイレン側がより組織として上位にあり、権限や得られる情報量が多いという違いによるものでしょう。
きちんとこの辺りの組織の差を押さえているのが巧いですね。
そして最大の違いが、スプライでは「組織としての連帯による打開」が描かれている点。
オイレンにおける犬達は比較的「組織の手駒」としての色が強く、スポットが当たるのは三人と三人が直接関わっている人だけ。
描かれるのは個々の闘いと三人の強い連帯でした。
それに対しこちらは、1巻で周知の通り上官と実動員である妖精達が“近い”です。
また、組織の規模もBVTほど大きくない事から組織としての連帯による戦いが描かれています。
三人以外の構成員やバロウ神父・冬真などの協力者が、背景ではなく大事な欠くことのできない脇役として活躍する様が見てとれます。
あちらが個人の奮闘を描いた作品ならば、こちらは組織の奮戦を描いているといった塩梅。
といったわけで、ひとつの事件をそれぞれの視点から描いた両作品ですが、「ゲームの別ルートを見ている」というよりは「別のゲームがたまたま同じ題材だった」と表するのがより適切な感じです。
尚、オイレン・スプライの各3巻ではこの2巻ほどのリンクを見せず、一旦また別々の物語が展開されるらしい。
その後でまた4巻から交錯の色合いを強めるそうです。
*1:てゆーか向こうがBVT、こっちがMSSを主役にしてるのだからコレに関しては違って当たり前