暴風ガールズファイト

暴風ガールズファイト (ファミ通文庫)

暴風ガールズファイト (ファミ通文庫)

  • ココにブルっと:剥げた仮面と脅威の啖呵「この教室の中で麻生広海級長様を敵に回して、平穏まっとうに一年を終えようなんざ、ゆめゆめ思うなよ?」(157頁)

学校という小さな社会の縮図で真に恐ろしいのは女の子の方ですよね…。


ミッション系の一貫校─聖ヴェリタス女学院─に通う麻生広海。
親友との別れの喪失感を埋めることができずどこか鬱屈としたまま新学期、高等部での生活を向えた彼女。
しかし、そんな彼女のクラスに居た!妙なのが・・・騒がしいのが・・・嵐の発生原因が・・・。
その名を─五十嵐千果─という彼女は何とラクロスで高校日本一になるため、今年からヴェリタスにきた外部組だという。
でも、ウチにラクロス部なんてあったっけ?
波乱と喧騒と根性の女子版スポ根グラフィティ、いまここに試合開始!



登場人物の心理描写と心理展開に定評のある(と個人的に思ってる)佐々原史緒さんの最新作。
何となく『スイートホームスイート』をスルーしちゃってたのでトワイライトシリーズ以来の佐々原さん。
今回もタイトルと表紙におっかなびっくり、しかし思い切って買ってみたところ・・・。
「くはー、これおもしれぇ!」
結論からいえば、見事アタリを引いた気分。
あまりスポーツ物の小説を読まない*1ので本作がこのジャンルにおいて優れているのか、このジャンルの小説ってのはどれもこれくらい面白いのか判らないのですが、兎に角面白いです。


物語は、冒頭のあらすじにもあるとおりそもそも「あると思って入学してきた学校にラクロス部がない」わけでして、まずは部の立ち上げ・メンバー集めから始まります。
(正確には「昔はあった」が正しく、いまは会員2名の同好会に格下げされている実情があります)
但し千果の超がつく行動力と能天気と注目度もあり、部員は割とトントン拍子に集まります。ある程度までは。
この部員集めが4章あるうちの2章、分量では1/3ほど。
ここまでは集まってくる部員が個性的な変わり者で、話もおもしろおかしいだけの展開(だけというのは憚られますが)。
作品の肝はこの後、部員が半ば揃ってからの苦難に。


詳細は読む時の楽しみに取っておいて欲しいので書きませんが、苦難の他にも、勝手に頭数に入れられて巻き込まれた形の広海の内心が徐々に変わっていく様子。
かなりの実力者である千果がラクロス後進国の日本に、そして部も消滅しているヴェリタスに拘る理由などなど丁寧で深みのある作りと描写、でもってソウルにグっと響くストーリーは読み応えあります。
解る人には解る「佐々原節」とでもいうべきものが炸裂。


また、ラクロスがマイナースポーツであることも考慮されているのか実際に競技してる場面は控え目で、試合展開などの説明にだらだらとページが割かれていないのも良い所。
総じて、タイトルでちょっと損してるような気がするほどの佳作だと思います。


ちなみに女子校が舞台ですが百合とか薔薇とか〜〜の誓いとかそういうのはありません。
逆に異性との恋愛云々もなく、本当に純粋にスポーツしてる作品っすね。
それから補足ついでにもうひとつ。
表紙を含め扉絵・挿絵(はモノクロですが)では漫画チックにカラフルヘアーだったりしますが、実際は一応格式ある学校の子達なので髪の色も現実的です。
と、どうでもいい補足をしたところで既に文字数が結構なことになっているので終わります。
当然続刊を出せるように書かれてるので2巻が楽しみです。
出るといいなー。

*1:いちばん最近で『バッテリー』すかねぇ