黄昏世界の絶対逃走

黄昏世界の絶対逃走 (ガガガ文庫)

黄昏世界の絶対逃走 (ガガガ文庫)

第4回小学館ライトノベル大賞の「優秀賞」受賞作だという一作。
まあ、購入の動機はそんなのとは一切関係のないところにあるのだが。
兎に角も、実にガガガらしいと言える単巻読み切りの逃避行劇。


というわけで、ひと月弱遅れとなってようやく読了。
読み始めてからはすぐだった。
ほんの数時間。
癖もなく、実に読みやすい文体だと思う。


内容の方は比較的堅め。
コミカルだったりキャピキャピしてたりといった調子はない。
全体的にシリアスで、そして何よりセンチメンタリズムの塊みたいな雰囲気を
伴っている。
結末も誰もが認めるハッピーエンドとは言い難い面があり、文体に癖がないのに反して内容には癖があり、読む人を選びそうだ。


以下、作品の概略について。
カラスと呼ばれる主人公は、相応の報酬さえもらえば殺しでも何でもやる便利屋。
日頃から贔屓にされている依頼主から「役目を終えたある人物」“黄昏の君”なる少女メアリを攫ってくるという仕事を請け負う。
連れ去ること自体は容易に成功を収めるカラス。
あとは依頼主の元へ彼女を届けるだけ。
こうしてカラスと彼女の短い間の二人旅が始まった


この後の展開は想像に難くないと思うし、概ね想像通りのものといって良い。

ただ、依頼主の元に辿り着くまでは割と平坦。
波乱含みで苦難の旅路、ということはない。
大変なのはその後である。

ボーイミーツガールとしては、王道の展開だ。
無論、アプローチはこの作品なりの個性があるけれど。


その他、世界観などの細かな設定に関しては割愛。
ただ、ひとつだけ説明しておくと、外気が汚染されていて長く吸い続けると精神を病んで死に至る世界において「一定の区間」の空気を清浄化する役割を負わされた者=黄昏の君です。
現役ならかなりの重要人物(ただしメアリは退役済み)。


というわけで、あまり巧い感想が書けなかった気がする本作。
独特の感触を持っているので、ちらりとでも興味を抱いたら読んでみるのがてっとり早いかも。
個人的には絶対に続編は出ません!的な読み切り作品として、結構気に入った。
著者がまた別の作品を出したら読んでみようかな、と思うくらいには。