将国のアルタイル 1・2

将国のアルタイル(1) (シリウスKC)

将国のアルタイル(1) (シリウスKC)

他のシリウスコミックを買った際についていた折込チラシで見かけて以来気になっていた一作。
まずはお試しということで、2巻までを購入し読み終えての感想及び作品の概要説明。
煌びやかな表紙からくるイメージとは異なり、重く静かに本格的な作品。


トルキエ将国の若将軍マフムートは、齢十二歳にして軍人への登用試験をパスし、その後史上最年少で国を代表する十三将軍の一角に加わった天才と称される人物である。
この物語は、そんな彼がその才能を遺憾なく発揮し、着実に迫りつつある隣国との開戦という危機を華麗に回避するお話・・・ではない。
いや、正確に言えば今後そうなる可能性ははらんでいるのだが、目下のところ彼にはそれ以前の課題が山積しているのが実情である。
具体的にどういうことかと言うと、確かに彼は才能もあり正義感もある優秀な人物であるが、優秀な将軍──つまりは上に立つ者ではなかったのである。


ある日、開戦すればほぼ敗戦は必至とされ、隣国の中でも最大の脅威である帝国との外交関係が一触即発の危機となる事案が発生。
就任間もないマフムートの活躍によりここでの開戦は避けられる運びとなったが、この件によって国内にも好戦派の将軍が居るを知り、懸念を抱くマフムート。
それから程なく、今度は国境沿いにてまたしても問題が発生。
先の件とは異なり非常にナーバスな問題を前に頭を悩ませるマフムートであったが、今回も機転を利かせ事態を打開してみせる。
結果を見れば万事において丸く収まった。
しかし皮肉にもこの件が彼の将軍としての欠点を露呈し、将軍職を除されるきっかけとなるのだった・・・。


というわけで、将軍に求められる能力はそうじゃないよね?という現実を突きつけられ、のっけから挫折を味わうことになる主人公。
幼少期である十二年前に戦火を経験し、その際に集落ごとすべてを失い唯一の生き残りとなった過去がある彼は、以来将軍となるべくひたすらに突き進んできた。
であるが故に、彼の経験とその見識は非常に偏りがあった。
まずはその狭い世界を広げるために見聞を広めるべきであるとして、彼は旅立ったというお話。


全体的に癖のある人物が多く、とりわけ帝国側はいかにもな感じとして描かれていたりすることもあり、雰囲気としては存外暗めな作品。
コメディ的な要素もほとんどなく、ひたすらに真面目な作品といって良い。


ただ、世界観を追求するあまり専門用語が非常に多い点は良し悪しか。
「将軍」「将軍会議」「盗賊」などなどこういった単語にはこの作品での大抵別名がついており、ルビがふられている。

例では左から順にパシャ、デイワーン、ヒルシズ

時によっては吹き出しの中がすべてルビつきの言葉で埋まっていることもあり、やや読みにくいし覚えにくい。
専門用語の方を無視し、漢字名の方だけで読み進めてしまえば差し支えないといえば差し支えないが、それだと世界観を十分に楽しめないという人は少し苦労を要するだろう。
その他、軍事・政争を扱っているだけに登場人物が基本的に男性のみ。
時々登場する踊り子以外にヒロイン的な人物も居なく、華に欠ける観は否めない。
反面、マフムートを筆頭にイケメンが多いので表紙の雰囲気と相まって女性向けかと勘違いしそうでもある。


というわけだが、上記二点を除けばこれといった欠点もなく面白い作品である。
3巻以降も購入の予定。