ベン・トー zero Road to witch

ベン・トー zero Road to witch (愛蔵版コミックス)

ベン・トー zero Road to witch (愛蔵版コミックス)

放送の始まったTVアニメも好評なライトノベルベン・トー』のコミカライズ。
原作を小説の著者が。
作画を小説で挿絵を担当するイラストレーター自らが担当した真の純正品。
そして物語は、高校に入りたての一年生だった槍水仙が、初めて出くわした半額弁当争奪戦に刺激され、その戦場へと身を投じ狼の仲間入りを果たすまでが描かれる。


さて、ゼロの名が差すとおり、時系列を過去に置き仙がHP部(現・同好会)に入部するまでのプロローグが描かれる本作。
仙の狼としての生い立ちを知ることができると同時に、小説では佐藤たちの先輩としての振る舞いを崩さない彼女の違った一面が見られる。
内容としては、X.5でナンバリングされる小説の短編集に収録されても遜色ないようなものだと言える。


また、序盤は先達者としてウィザードこと金城が仙に対し、半額弁当争奪戦のいろはを説く展開が盛り込まれている。
そういった観点では、アニメを皮切りに本作に興味を持たれた方が一番得を出来るかも知れない。


ただ一方で、小説6巻で初出となる人物が物語に深く関わっており、この面から見た場合は、やはり原作ファンへのサービスといった色合いが強くなる。
重ねて言えば、柴乃さんはあくまでもイラストレーターであり、漫画家ではない。
今回のコミカライズが漫画の初挑戦ということもあり、本人の弁にもある通りまだまだ漫画としてはいたらない点も少なくない。
とりわけほとんどの頁・コマが人物のみであり、およそ背景というものがないのは見る人によっては辛い評価となるだろう。


その他、小説ほどではないが、漫画にもきちんと原作者得意のセガネタが仕込まれているのには思わずくすりと来てしまった。
さすがの一言である。
(比較的有名なネタなので、セガ好きでなくとも気付く人は多いか。)


以上を踏まえると、これ単体をひとつの漫画として見ると腹八分目であるが、ファンサービスとしては大いに腹を満たしてくれる作品だ。
興味がある方は、集英社マンガネット「S-MANGA.NET」で第1話をほぼ終わりまで(微妙に全部ではない)試し読みすることもできるので、まずはそちらを読んでみると良いだろう。


ちなみに本作は読み切り企画であり、この物語はこれでおしまいである。
両タッグによる漫画化は、現在は別企画を連載中。