灼眼のシャナ 10

灼眼のシャナ 10 (電撃コミックス)

灼眼のシャナ 10 (電撃コミックス)

自身を省みずひたすら兄のために尽くす愛染他ティリエル
その愛情の示し方に強い抵抗を覚えていたシャナだが、歪んでいながらも偽ることのない彼女の姿勢に感じ得るものがあることに気づいた。
そう、自分もまたあるいは悠二のことを・・・。


電撃文庫史上に残る傑作コミカライズ、万感の想いで迎えた最終第10巻。


表紙イラストがいかにも最期を思わせるような出来だったので、よもやと思って裏表紙に目をやると・・・。
やはり大きな流れからは逃れられなかったようだ。
長きに渡った原作小説の完結。
TVアニメシリーズの最終章。
その一環としてこのコミカライズもまた完結を迎えた。


しかし、そういった外堀りが埋まっておらずともここがひとつの目途であったのも事実。
原作では4巻に相当するところまでを描き切ったが、それでも要した期間は6年半。
物語上でも原作が最初の大きな一区切りを迎えた地点であり、この次の区切りを目指すとなるとまた同じだけの年月が必要となりかねない。
ましてや20冊を越える原作をすべて漫画化することなど到底不可能であるのだからどこかで終わりが来るのは初めから避け得ぬことであった。


そういった観点からすれば、無理に話を省略し展開を急ぐことなく着実に原作の物語を追ってきたこのコミカライズは、小説に換算すればわずか4冊にすぎずとも実に充実したものだったと言える。
メディアミックス展開が盛んになるにつれ、あたかも原作の広告代わりかのような安直なコミカライズが散見されるいま、本作の示した方向性は是非見習って頂きたいところである。