レインツリーの国

レインツリーの国

レインツリーの国

  • ココにビックリ「……重量オーバーだったんですね」明かされる衝撃の事実(71頁)
  • ココにグッときた「きりがついたから今日は帰ります」(192頁)

前者は予め難聴者が主役の物語と知っていたのに愕然としたなぁ、ほんと。はじめからじゃなく、作品の途中でそうなるんだと思い込んでたのもあるんだけど。
で、後者はもうただひたすらに微笑ましいな、って。
(『図書館内乱』ないし本作のあとがきから読んだ人には周知のことだけど、一応ステルス)


想いは一緒なのにどこか遠い*1二人の物語。
すごく真摯に、そしてひたむきに向かい合う彼らの物語。
有川さんの長編としては、初の*2ファンタジー・SF要素なし、純度百パーセントのまじりっ気なしの恋愛小説。
ネットを通し、10年前鮮烈に心に残った一作の小説の感想を共有することから始まるふたり。
はじめは顔も知らない相手とただメールでやり取りをするだけだったが、強いシンパシーに「会いたい」という想いを抑え切れず会うことになる。
しかし、現実での障害に、お互いの些細なズレに、彼らは苦しむことになり…。

同著者の『図書館内乱』でのようなコミカルな恋愛模様ではなく、極めて真面目な、重すぎるくらいにまっすぐのストーリー。
読み手までが「じれったい・歯痒い」思いに囚われてくるけど、最後にはきっととてもポジティブな気分になれると思う。
ただ、最後の最後。finの前の一文は「〜〜と笑ってくれるはずだった。」じゃなく「笑ってくれるはずだ。」の方が良かったなー。
とにかく、そんな細かな点も要求したくなるような良い作品。


そうそう、この“『図書館内乱』に登場する本を実際に出版してしまおう”って企画は出版社立案で有川さんに持ち込まれたものではなく、何と本人発案の元、出版社に掛け合った企画だそうで。
うはぁ、有川さん熱血やなぁて思った(笑)。
まあ、もちろん「じゃあやってみようか」と請け合った新潮社さんも新潮社さんで粋なわけだけど。
それから、男の方はバリバリの関西弁です。
そういうのが苦手な人もいないわけではないので、一応の注意喚起ということで。

*1:遠距離恋愛など物理的に、ではなくて

*2:短編では過去に例あり 『Sweet Blue Age』収録の「クジラの彼」など