銃姫 8 〜No Other Way to Live〜

銃姫〈8〉No Other Way to Live (MF文庫J)

銃姫〈8〉No Other Way to Live (MF文庫J)

 7巻はこっち
-銃姫8巻の“ココにジンときた :オルテッグ魂の咆哮「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」(287頁)
計算もできない、字すら書けない。「落ちこぼれ」「わが名家におまえなど要らない」そう言われ続けた挙句、国を追われたオルテッグが得た彼の生き場所。仲間を守るため、愛する人を守る為吼えた。(ここから)それは、決死の突撃だった。勇敢な彼の、最期となった…。(ここまでネタバレ)


先の読めない本格派ファンタジー銃姫』の8巻。
この作品、一応セドリックが主役であるものの絶対的主役ってわけでもない為、脇役の出番も多く彼らが話の大部分を占めることもあった。
俺は時々思ったよ「もっとセドを出せよヽ(`Д´)ノ」って。「眼鏡はいいよ!」と(笑)。
そして遂にきた。今回は完全セドリック。
ほとんどセドリック、セドリック(何故2回言う)。
冒頭、ホルスを焦点としたプロローグが60頁近くあるも残りは9割セドリック。
なんていいますか、未熟なセドリックが己が未熟をいちいち痛感しつつ、それでもめげずに立ち向かって一生懸命何かを成そうとしてるのがすっごい好きなんすよ。
その観点から言うとほんともう、すごい良い巻でした。
ただ、今回は…もとい、今回もそれだけではないです。


8巻は始め数十頁こそ7巻からの引継ぎでエルの正体がバレた話ですが、「それを知ったセドはどうするのか」「知られたエルはどうなるのか」これに関しては結論先延ばしの形で一旦後に置かれます。
8巻のメインはこれではなく、灰海での流星軍対スラファト軍です。
小規模な戦闘を繰り返し、長きに渡り睨み合いを続けてきた両軍。
冷戦とも言えるかの均衡が帝国軍介入の報により崩れ、終に全面衝突、総力戦の運びへ。
地の利と智謀により圧倒的少数の流星軍の存命を計るチャンドラース。
圧倒的戦力とチャンドラースに負けず劣らない知略によりスラファト軍をまとめるかつての恋人ジュディット。
ふたりを大将に据えた両軍の直接対峙に因らないひと月を越える長き心理戦と、その果てに向かえる激突までが一挙に書かれる。

これがまたねー、いいんですよー。
善が掲げる正義を振りかざし、一方を悪として打ちのめすなんてチャチな戦争じゃないことが肝ですね。
どちらも守るべきもの、信じるものがあり、血が通った人間として“かつての友”を敵に回してまで闘ってますから。
今回はもうこの悲しき大将と両軍の戦に尽きますかねぇ。
アレ?そしたらもしかして今回ってセドリックじゃなくてチャンドラースが…。
いやいやいや、やっぱりセドリックですよ、えぇそうですとも間違いなくセド…のはず。
まあそうですね、要するにどっちもってことで、超贅沢品と思って頂ければOKです。
それと、戦に関する描写・記述が大半は上述した行軍など戦略上の戦いのものであって、直接戦闘のシーン(=アクションシーン)は過度に頁を割かず*1短くシャキっとまとまっているのも好感。
それにね、もうねー、電車の中で読んでるというのに泣きこそしないけど目がうるうるなってくることが二度三度。
相変わらず高殿の姐さんは俺の涙腺に容赦ない攻撃を加えてきやがりますよ!


あとは前巻の感想と絡めていくつか。
まず、7巻読んだのも随分前だからか或いは過程の問題かセドがミトにやたらキツく当たることへの違和感も薄れた感じはしました。
それでもミトとの会話だけ一人称が「俺」だったり口調が乱暴なセドって何か変だけど(笑)。
もうひとつ、前回不足気味に思えた人物機微は今回たっぷりです。たんまりです。
これが8巻に満足した主因でもあるかも知れません。
3つめ、まだまだ誤字脱字が多いです。
てゆーか改善の節が見られません。
きっとこのままシリーズ終わります(笑)。
さて、最後にあとがきより。
「次、ほんとにラスト巻なのか。つーか終わんのこの話。(中略)というみなさまの苦情を乗せて(略)。」
えぇほんとに。
そもそも、そんな無理に終わらせることもないんじゃないかな、と。
マンネリもないですし、急いで結論の欲しい問題もないですし、何より終わらないと思うんですこの戦い・この話・この物語。
どこかで終わらせることもできるってだけで、テーマも舞台も壮大ですから基本終わりなき物語だと思うんですよねー。
あとがきでは9巻がMF文庫J初の320頁ぶっちぎり*2or10巻て区切りいいんじゃね?とあり、ぶっちぎりについて高殿さん、担当さんに超えてもOKか訊く→担当さん「いやー、それは偉い人に聞いてみないと」というお返事。
銃姫だけに十でもいいけど、15巻も区切りがいいと思うよヽ(゚∀゚)ノ


あぁ、かなり長くなっちゃった。今までで最長かな…。これ全部読んでくれる人いるのかな…。

*1:個々人の対決はセド・チャンドラース合せて十数頁ほどに過ぎません。こうして後から考えてみると驚くほど短い。

*2:一部では有名でしょうか。MF文庫Jは値段は580円(税込609円)固定 頁数も制限範囲内に固定という決まり?があります。注:Jだけですよ。