とらドラ! 5

とらドラ! (5) (電撃文庫 た 20-8)

とらドラ! (5) (電撃文庫 た 20-8)

  • ココにジンときた :その時、一陣の風「──遅いね」(272頁)

憎いぜアンチクショウとはまさに。


コメコメしてばっかのラブはもういいかなぁ、と若干の食傷感のあった4巻。
それだけに、期待がやや小さかった5巻。
しかして、読後の結果はというと…大 満 足
いいすねいいすねー、いいっすよコレ。
単直で言えばラブなコメからラブすらほとんど取っ払って、青春コメディに変貌を遂げた塩梅です。
特定個人に寄せる恋心だとか好いた惚れたは一休みして、ここいらで一発わけぇモンが寄り集まってみんなで作り上げる青春ストーリーを覗いてみようじゃないか!というコンセプトでもあるかのような…。


と、そんなわけで今回は3・4巻とはちょっと流れを変えておバカ度ちょい減量・シリアス度倍増の文化祭エピソード。
文化祭とくれば学生モノには付き物の一大イベントですが、フィクションの中の文化祭でだけ許される“何でもアリ”を活かして祭りが生み出す独特の空気の最中でのいちエピソードをとても巧く描いたなぁと感慨深かったです。
他と比較するのは一方を貶めることにもなり宜しくないことですからしませんが、管理人の数少ない電撃既読作の中でも他を圧倒する“文化祭”をしていたと思います。


先に挙げた“何でもアリ”は程度の違い・内容の違いこそあれ「そんなこと現実にはあり得るわけがない」ことには変わりないんですが、それを読んで
・「こんなんありえんわ」と白けるか
・「ありえんけど、でも、これはイイ!」と惹き込まれるか
といった大きな差が作品によって生まれます。
言うまでもなく本作はこの後者に当たるわけで、グイグイ惹き込まれていき、「オチもラストも読めるのに」「こんなことはあり得ないおバカな話だとわかっているのに」終盤の展開には込み上げてくるものがあり、落涙手前のうるうるまで追い詰められたりしました。
涙腺弱し、俺。


さて、読後直後に書いてるため自分でも何が何だかやや分かってない節がありますけれど、兎に角もうイイんですよ、すごく(笑)。
話は結構重いんです、久しぶりに。
ラストも美しいですけど多分、ハッピーエンドとは少し違うと思うんです。
それでも、歪みも凹みひとつもないきれいな球よりはいびつだろうが凸凹で傷ついていようが光り輝いてる青春が一番じゃないか、とそう思える何かが5巻にはあったと思います。
同時に自分のこの頃はそんなに輝いてたかな、と記憶を辿るとその違いに大河らが眩しく感じられ、寂寥感を覚えしみじみとしてしまう。
ちょっとバカでコメディな青春物語として、このバランスの完成度はかなりのものじゃないかな。
人それぞれ好む所が異なるでしょうけれど、いつも全開の主観で言うならば5巻は1巻のそれに勝るとも劣らない良作です。


あとがきでは年内に6巻をお届けしたい所存との意気込みも飛び出していますし、この勢い留まることなく次の作品を打ち出して欲しいっすね。