しおんの王 6

しおんの王(6) (アフタヌーンKC)

しおんの王(6) (アフタヌーンKC)

  • ココにしんみり :久谷「すみません名人・・・・・・もう少し──もう少しだけ見ていたいんですこの局面を・・・・・・」(77頁)

目前にまで迫るも未だ手の届かぬ名人という高み。
この回は初めて久谷が物語の主役となった回といってもいいですね。


(今回は都合上特別に、ネタバレというか内容の肝に関する配慮をしていません。
衝撃的な展開に関してもぼかさずに何が起きたのかまで記述していますのでご注意下さい。
一応ステルスにはしてあります。
真ん中へんがステルスだらけになっている気もしますが…。)


裏表紙に「オープントーナメントも大詰め!」「事件の真相もついに秒読み突入!!」とあるとおり物語の進展や内容においてとても濃い巻です。
まず、紫音が優勢に進めながらも「このままでは負けるよ」と悟の思わせぶりな発言のあった親子対決が決着。
ストーリーの進行上ここで紫音が負けることはないと考えられたので結果は誰しもが予想した通り。
ここでの着目点は「勝ち方」ですね。
“将棋”に長けてはいても“勝負”に向いていなかった紫音の成長が見て取れる良い展開だったと思います。


次は冒頭の久谷がある面で活躍する回。
ここでは久谷が勝負をしている様子が作品で初めて?仔細に書かれています。
また同時に羽仁名人(と悟)の昔にふれる回想もこの回からぼちぼちと。


この次が衝撃の展開。
やがてくるだろうとは思われた歩の母の死が唐突に訪れます。
よもやこんなに早いとは思いもよりませんでした。
そして母の死によって性別を偽ってまで将棋を指す理由を失った歩。
そうなってからの展開にしてもやはり、半ば紫音に感化される形で目的のための手段に過ぎなかった将棋を指す楽しみを思い出し実感した歩ですから何らかの形で・・・というか「男性として棋界に戻る」だろう
とは想像していましたけど、「自ら望んで」ではないとはいえまさか名人に弟子入りすることになるとは…。

この辺りの怒涛の展開は驚きと流れの速さに圧倒される。
なんともはや、すげぇ漫画だな、と。
(それはそうとして、歩の口からではなくああいった形で歩の母の死を知らされたあとの紫音がそっちはそっちでとても気の毒…。
というよりむしろあらかじめ長い歳月を経て覚悟ができていた歩よりも、唐突に死に直面した紫音の方が気の毒とさえ思えます。

もうね、花束もって呆然と立ち尽くすところをあんな風な絵にされたらただじゃおけないっすよ。
俺、泣いちゃうよ?
原作もさることながら作画もほんと凄いな、と毎度そう思います。)


その他、この巻では悟がやたらと紫音に意地悪く振舞うワケにもつっこみあり。
そして動機は「手前勝手な理屈ではあるけれど、ひとりの人間が感情からそういった行動をとってしまうのは頭ごなしに否定することもできない」ってゆー複雑なもの。
紫音も将棋を通して8年前の事件の真相に迫っていますが、悟もまた同様だったと・・・。
同時に、悟がプロアマの別なく参加資格も現金10万だけという形式でのトーナメントを立案し、更には自ら渦中に身を投じた理由についても説明があり。


さらに、作中で記者から将棋を指す理由を問われた紫音が「8年前の真相を知りたいから」以外に将棋を指す意味を考え、自分なりの答えを出す姿も描かれています。


そんな塩梅でとにかく色々てんこ盛りの第6巻。
アニメがスタートし、これからしおんを手に取る人も多いだろうこの時期にリリースされた巻としては最高といえる充実度ではないかと。


最後。
これは予断ですが、6巻を読んでこの作品は意外と早い時期をもって完結を迎えそうな予感がしてきました。
最初は『ヒカルの碁』のように長期連載でもってしおんの成長を描いていくのかとも思っていたけれど、サスペンスとの両輪で走る作品である以上、片輪が取れたらやっぱり止まるのかな?と。
裏表紙のあらすじが必ずしもすべてではないですが、「事件の真相もついに秒読み突入」とありますし、サスペンスの方については残りはそう長くない模様。
となると、雰囲気的にも終着駅だけではなく、駅までのレールの長さもあらかじめある程度定まってそうなしおんはもうそろそろ終わりも近いのかなぁとか、色々考えて心配になってたりするわけで…。
案外トーナメントの閉幕と作品の完結が同時だったりするかも知れませんねぇ。
そうして、紫音は決勝で善戦するか或いはあるいはまさかの優勝を果たし、女流ではなく棋士として男性と同じ舞台で将棋を指す決意を固め、歩は男性として棋士を目指す道を進みだし〜〜的な最後、とかあり得そう。
うーん、まだ終わって欲しくない作品なんすけどねぇ。
それだけ良い作品なだけに、かえってネガティブな妄想が止まらなくなってきてます。