図書館革命

図書館革命

図書館革命

  • ココにゾクゾク :稲嶺元司令「どうぞ動かないでください。私は図書隊の設立に没頭することで妻を奪われた復讐心を何とか押し殺して生きてきた男です。この地で、妻と暮らしていた私の家に、私の許可なく入ってきたあなたがたの頭は、もはやクレーの的にしか見えないのです。私は今、なけなしの理性で引き金を引かずにいます。しかし、あなたがたが動けば反射で撃ってしまうかもしれません。」(113頁)

静かに燃え上がる怒りの炎、これまで良化機関に幾度となくほぞを噛まされたであろう司令だけにその怒りの根は深い…。
(いつになく長い引用ですみません)


堂々のシリーズ完結編。
こいつらは走り出したら止まらない、とは登場人物生みの親、著者の有川さん。
この本読み出したら止まらない、とは登場人物見守る読者の俺。
睡眠時間がなくなっていくのも厭わずに最後まで読んでしまいました。
思えば『海の底』の時もそうでした、どうも有川さんの作品になると度々そういうことが…。


ともあれ、めでたくも無事に完結を迎えたこのシリーズですが、これだけのシリーズと付き合ってきた時につきものの「読後にちらつく一抹の寂寥感」が不思議とあまりない。
(有川さんも、終わってみたら意外と寂しくなくて驚いた。とあとがきで語っています)
もちろん別れが惜しくないようなどうでもいい作品というわけでは断じてないです。
それだけに「不思議」なわけですが、こと有川さんの作品の読後感としてはあまり珍しいことではないかも。
これは有川浩という書き手の筆致がなせる特有のものかも知れません。


さて、読者のとても多い人気シリーズなのでソースはいくらでもあり、ここでまたあらすじの説明をするまでもないかな、ということでそちらは割愛させてもらいますが、ラストもしかしたら多くの読者が期待したような結末とは違うのかも知れません。
当初、これだけ盛大に風呂敷を広げて一体どうやって畳むつもりだろうか、と懸念された物語。
完結に言ってしまえば、この完結巻で畳み切った!というものではないです。
むしろ、最後の最後で更に広げられるだけ広げて引き千切れそうなまでに広がったものを「とりあえず元の大きさまで戻した」そんな印象の顛末。
しかし一度千切れるくらいまで伸びたもの。
広げるのを止めたからとて一度あれだけ伸びたものが以前のまま元通りにはならない、そんな微妙な違いが生じた。
だから一見して「何だ、結局何も変わってないじゃないか」と思えるけれど、実はそんなことはなくて、少しの変化と未来への兆しが生まれるきっかけになったよ。
そんな感じのストーリーだと思います。


ちなみに、最後まで一貫して図書館側の視点に偏重していて良化側が半ば“悪”である視点が貫かれました。
やはり有川さんにも直接「ワンサイド寄り過ぎる」というご意見が届いているようですが、これはこれで良いんだと思います。
そういう作品なのだからそこを曲げてまで中立に描く必要はないだろう、と。


とまあ、図書館を取り巻く環境云々の骨子はそんな塩梅ですが、恋愛の方までそうということはなくて、そちらに関してはきっちりバッチリ収まりよくケリ?(笑)がついています、ご安心を。
てゆーか柴崎はやっぱり手塚なんですね…。
くそーーーーー!俺の柴崎を返せー!!
あんなへそ曲がりには勿体ない・・・ぐすん。


尚、漫画化に続いてアニメ化も決定したようです。
アニメ・・・ですか、そうですか。
漫画化ですら何だか得も言われぬ抵抗感があったわけですけど、ついにアニメにまで。
まあこの辺はビジネス展開大好き角川電撃レーベルなので、人気が出れば避けられぬ道ではあります。
何にしてもとりあえず、どちらかといえば何となく反対という俺のような人たちも「よくぞこれ程のアニメにしてくれた!」と手の平を返せるだけの作品が出来上がってくれると良いなぁ。