異国迷路のクロワーゼ 1

異国迷路のクロワーゼ 1 (角川コミックス ドラゴンJr. 111-2)

異国迷路のクロワーゼ 1 (角川コミックス ドラゴンJr. 111-2)

  • ココにジンときた「俺たちこの広いパリの中でたった三人の身内なんだから」(175頁)

そう。それこそがユネのいう「家族」の意味。


19世紀後半、ヨーロッパでは鎖国を解いたばかりの日本から流入してくる新奇な文化が流行していた。
そんな時代に単身フランスへ渡った少女ユネ。
彼女はあまりにも異なる文化・風習に戸惑いながらもめげることなくそれらを乗り越えてゆく。
そんな彼女と居候先の工芸店主人たちの交流を描いたパリ滞在記。



やえかのカルテ』以来となる武田さんの長期連載作品。
いやー、とても良いです&好きです。
普段イラストレーターとして遺憾なく才を発揮する武田さんの漫画家としての真髄を見た!
うまく表現できませんが、俗に言うハートフルストーリーとでも言えば良いのか、まぁるくてあったかい物語を描くのが本当に得意な人だなぁ、と。
読めばやさしい気持ちになれること請け合い。


やえカルの時の主舞台の病院にやえか・せりな、そして二人を見守る位置に院長の鈴乃となっていた取り合わせは今回も。
舞台は50年の歴史に幕を閉じようとしている歩廊(アーケート街のようなもの)の一角に店を構える工芸店。
登場人物はユネとその店の若き三代目クロード、そして自由気ままな隠居生活をする初代のお爺さんの3人。
違いすぎる文化に苦悩しながらもめげずに健気に頑張るユネに感化されたクロードが心開き、二人が親交を深めていく物語の基本構図もやはり似た所があるかも知れません。
そしてこの限られた人数こそがひとつの魅力でもあると思います。
それというのも、少ないだけに必然的に描かれる人と人との関わり合いがとても密に濃縮されるから。
いずれにせよ、ユネがとても良い子で、また彼女を取り巻く人々も根は心優しい人ばかり。
帯の煽りにもある「飾り気のない温かさ」が感じられ、とても読後感の良い作品だと思います。


それにしてもユネ、かわいいなぁ…。
武田さんはちんまくて一生懸命な女の子を描かせたら右に出る者が居ないほどに魅力的な人物を生みだす方ですね。
今回はまるで日本人形のようなコ、ということで目に鮮やかな着物という装い。
表紙と巻頭のほんの数ページだけではありますが、映えるカラー絵は必見ものです。
掲載誌が隔月誌だそうなので、刊行ペースが早くないであろうことが残念でなりません。