ソーダ屋のソーダさん。

  • 今回の名場面:「名を聞いたらこう答えたよ。椒子先生、早田なつめです、と。」(102頁)



ベストオブ湖西作品!
湖西さんファンの人もそうでない人も、読んで損はない必見の一作。
つい先日、消化不良の不完全燃焼作が出てしまったばかりの作者ですが、こちらはまったくの逆。
1冊の世界にすべてを綺麗に収め、感動のエンディングへとつなげた名作。


本当にすごく良いです。
1冊限りの短期完結作品としては既に『お湯屋へようこそ』という完成度の高いものを残している湖西さんですけれど、今回はそれを更に凌駕。
こんな話もかけるのか、とファンでも驚く新たな一面がみれます。


形式はすべて4コマ。
但し内容は伏線バリバリのストーリーもの。
最終回へむけて第1回目からきちんとレールが敷かれた4コマ漫画らしからぬ緻密さをはらんでいます。
中身もギャグを控えめにシリアスあり、ミステリありの多様性に富んだ作り。
というより、序盤にあるモノローグ「このとき俺は浮かれていて、沙和さんが本当に秘密にしていたあのことに気づきもしなかった。後から思えば沙和さんは真実の欠片を口にしていたのに」などにはギャグ漫画の世界からそうではない世界へと一瞬にして引き戻される力があり、ギャグ要素を抜くと4コマでありながら連ドラ並の感動ストーリーな作品。
形態が4コマ、キャラクターの絵柄もデフォルメということで一見するとそうは思えなくとも、その実、そこいらのドラマの平均点を優に越える物語が繰り広げられています。
4コマ=ギャグという一般的な視点で読み始めると、思いもよらず感動させられてしまったり。


そして得意の下ネタも今回ばかりは相当押さえ気味ですが、そこに頼らずとも笑いが取れる良い仕上がりになってるかと思います。
オススメの1冊です。
ちなみに最終回は全体的に書き直しがされ、雑誌掲載時とは別のラストになっているそうです。


尚、今回はあらすじはあえて書かないでおきます。
4コマでは必ずやっている登場人物紹介もしないでおきます。
まっさらの状態から読んでもらうのが一番だと思いますので。