暴風ガールズファイト 2

暴風ガールズファイト 2 (ファミ通文庫)

暴風ガールズファイト 2 (ファミ通文庫)

  • 今回の名場面:「去年の大会でビデオを撮ってるときは、それがちゃんと役に立つなんてちっとも思ってなかったから。だから、その……嬉しくて。」(中略)「本当に、その時は夢にも思わなかったから。レンズの向うでただ見てるしかなかったチームと、こうして自分が戦える日がくるなんて。」(260頁)



「ロッソ・テンペスタ!」
「おう!」
「超えろ、限界!」
「おう!」
「ぶっ倒せ!」
「おう!」
「Here we go!」
「おうーっ!」
異色の体育会系美少女スポーツ青春グラフィティ第2巻、テンペスタが如き脅威のスピード刊行で早くも登場!


やって参りました、熱血根性吹き荒れる女子版スポ根小説第2巻。
練習場ゲット!
ユニフォームゲット!
チーム名ゲット!
あとは部員を規定人数そろえて脱同好会、そのままの勢いで公式戦にエントリーを果たすだけ。
しかし言うは易し行なうは難し、その「だけ」がそう簡単ではなく…。


とはいえ、それは作品内での労力と時間の話。
部員が揃うまでの道程をあまり長々やって肝心の競技をしていないのでは本末転倒ということもあり、全4章構成のうち2章、ページにして1/3という読者に優しいテンポの良さで部員が揃います。
そうして揃った後は、夏休みを利用して合宿を張り、ズブの素人の新人を鍛えしごいて来るべき大会への準備を進める。
そして最後に初の公式戦を戦う彼女たちを描いて2巻は終わります。


ちなみに試合は都合3試合経験しますが、競技風景を仔細に描いているのは2試合のみであり、また、1巻からの傾向を引き継いで一試合の展開に大量のページを費やす事もされていません。
実際に競技をしている最中とそうではない部活の描写のバランス、下手な漫画や小説は前者─試合風景─を書くことに比重が偏りがちですが、現実の部活動なんてのは9割以上が日々の練習や生徒同士のいざこざだったりの非競技状態で占められてます。
この部分をおそろかにしない作りはやはり大事ですよね。


そしてここの描写がしっかりとされており、築き上げられてた素地が丁寧である程に試合が始まる直前からの流れに乗って作品に没頭することができ、また、熱くみなぎってくるものがあるのだと思います。
その観点からすれば、この2巻は後半の盛り上がり方が相当のもの。
冒頭に書いた「 」部分は試合開始直前にテンペスタが円陣を組んで行う掛け声なのですが、ココは本当に、みなぎってくるものアリの好シーン。
これぞ団体競技の醍醐味!
心を、想いをひとつに合わせプレーを繋ぐ。
途中トラブルでチームがバラバラになりかけても最後にはひとつに纏まり、勝とうが負けようが精一杯やりきる。
そして、勝てば爆発せんほどの喜びを。負ければどうしようもないほどの悔しさを噛み締める。
スポーツ、青春のど真ん中を正攻法直球でついてくる本作…すごく良いです。


尚、作者の脳内予定では次の大会はもちろんのこと、上級生の引退、新一年の加入、ひいてはコーチを登場させたりといった部活動でのストーリー進行が盛りだくさん。
更には部活を離れてミッション系の女子校ならではの学校行事の模様もお送りしたいとか何とか…。
当然、すべてが実現するかどうかはビジネス上の都合との駆け引きになりますが、この分であれば少なくとも4巻くらいまでは順調にリリースされそうな気がします。
まあ、個人的にはこの2巻で終わってしまうのもひとつの完成型としてアリだとは思いますが。
というより実際、あとがきを読むまで本当に「これ、2巻で終わったのかな?」とすら思いました。
それほどに一個の作品としてすばらしい仕上がりになっています。