シゴフミ 4〜Stories of Last Letter〜

シゴフミ〈4〉Stories of Last Letter (電撃文庫)

シゴフミ〈4〉Stories of Last Letter (電撃文庫)

  • 今回の名場面

「そんな心配はしなくていいわ」
(地の文、略)
「あなたが手にしているそれが、シゴフミだからよ」
(222頁)


堂々のフィナーレと事のすべての始まり、そしてひとつの終わりまでを集めた珠玉の最終巻。
そしてあとがきにて明らかになる「シゴフミメディアミックス企画」の全容*1
小説・アニメ双方を併せることでひとつの物語として繋がる作品になっていました。
無論、小説だけでも一個の作品として完成はしています。


最終巻となる今回は、配達人としての文伽が主役となるエピソードとそうではないものが入り混じっています。
前回の3巻でもトリのエピソードとエピローグが別の配達人─沙音─を描いたものでしたが、今回もそういったエピソードが含まれています。
ただ、今回のそれに関しては3巻の時と違い文伽の関与・登場が一切ないわけではなく、配達人になる前の彼女が物語に出てきています。
そういった形式を取り、生前の彼女と沙音という配達人(更に言えばアニメのフミカ)、そして配達人となった文伽をつなぎ受け継がれる想いが描かれています。


そして、シゴフミは確かに奇跡だが、時にはシゴフミが原因となり悲劇を招くことがあるという悲しい現実がある。
けれどシゴフミはただの現象でしかなく、本当に奇跡を呼び起こすのはそれを差し出す人と受け取る人。
だからシゴフミは、決してこの世にあってはならないものなどでは…ない。
(結末ネタバレ)
と、この作品の世界観と根源的設定に対して“答え”が明示されたとても良いラストを迎えています。
短すぎず長すぎず、後から手を出すのにも程良い4冊の本に収められたシゴフミのストーリーに是非触れてみて下さい。
ちなみに発売はアニメの最終回よりも幾分先でしたが、これを書いている現時点ではあちらも完結を迎えています。
どちらから先に入っても良いかと思います。


ちなみに、あとがきで判明した全容とは大体以下のようなもの。
小説はアニメ版の先行ノベライズとして立ち上げられたメディアミックス企画のひとつ。
そして出版当初は雨宮さんの「オリジナル作品」として世にリリースされていたが、実は原案者*2が居た。
但し、その事は言ってはならない決まりになっていた。
尚、その原案者とは湯澤友桜(敬称略)。


でもって更に裏話もあとがきに載っていまして、アニメの放送にあわせた先行ノベライズだったが故に締切関係で非常に苦労したそうです。
さらにアニメとの関係上から途中での設定変更まであり、小説版は何かと大変だった模様。
そういった意味では、先にスタートこそしているのものの企画の基軸はアニメの方にあり、あちらの方が条件として色々恵まれているため完成度は高いのかも知れません。
著者自身、小説版は『シゴフミ』の外伝と語っています。

*1:アニメ版の雑誌記事などで既に明らかになっていたのかも知れませんが。

*2:原作ではない