〈本の姫〉は謳う 2

“本の姫”は謳う〈2〉 (C・NOVELSファンタジア)

“本の姫”は謳う〈2〉 (C・NOVELSファンタジア)

  • 名場面ピックアップ

「お前も、その男も死ぬんだぞ?」
「知ったこっちゃありませんわ」
セラは舌鋒鋭く、鮮やかに言い捨てる。
「愛する者のためなら、歌姫はどんなことでもするのですわ。
愛する者を守り、愛する者と共に滅びる。それが歌姫の役目。」
(230頁)
本当のセラは強いなぁ…。
潤んだ瞳で控えめに自己主張してたのが遠い昔のようだ。


母が病に倒れたという報を受け馬車を飛び出したアンガス。
ジョニーとアークを連れた賑やかな旅から再び姫との二人?旅に戻り、一路かつて捨てたはずの故郷へ急ぐ。
そして帰郷をはたした彼を待ち受けていたのは…。



取り急ぎ2巻を読了。
今回はアンガス帰郷に際し、彼の生い立ちからエイドリアンの元へ転がり込むまでの過去も明かされます。
これに関しては案の定というべきか、迫害を受け街を追われた後も過酷な人生を辿ってきたことが知れます。
数奇な運命を辿ってきた事は物語の主人公らしいといえばらしいですが、如何せん重い…。


さて、アンガスの帰郷と過去の話は2巻の全部ではなく前半だけとなり、後半は再会したジョニーらとスペル回収の旅を再会。
拍子抜けするほどにさくさくと回収が進むも、どこか様子がおかしい姫。
どうやら回収が進むにつれて取り戻した記憶が彼女の中で澱となっているらしい。
しかしアンガスも姫が自ら口を開くまであえて訊き出そうとはせずにいた。
そうして順調にスペルを回収した二人は一度バニストンへ戻ることする。
その頃にはセラを置いて街を出てから一年近くが過ぎようとしていた。
それだけの月日を経て街へ戻ったアンガスは驚愕の事態へと直面することとなり…。



といった後半があるわけですが、あとがきで著者も自省しているように後半は後引く終わり方をしており、若干3巻へ持ち越した感じ。
また、もうひとつの物語─天使族の話の方ものっぴきならないストーリーが展開されていますが、そちらは割愛。
それよりも今回はセラが…セラがああぁぁ!


アンガスがバニストンへ戻ると、セラは少し見ない内に町中の男の視線を集める美少女になっており。
とても14歳とは思えないほどに変貌。
でもそれは別に問題ありません、むしろ歓迎です。
大変なのは外見じゃなく中の方だーーー!
声と記憶を取り戻したのをきっかけに性格まで別人かと思われるほどに変わりました。
変わったのではなく実際は元に戻ったわけですからこれが本来のセラであり、喜ばしい事なんでしょうけれど以前と真逆になったとしか思えない。
どう考えてもおてんば娘です、本当にありがとうございました。
「何しやがりますの」とか「ふざけるなですわ」とか言い出すんだぜ、信じられないだろ?
「何するの」とか「ふざけないで」だったら良かったんすよ、それなのにこのおかしなお嬢言葉はどうかと。
変わったんじゃないです、これが元々なんですと言われても読者的には変わったとしか思えないですし…。
しょぼーん。
それと欲を言えば声を取り戻すきっかけは幸せな形であって欲しかったなぁ、と思います。
ショックで戻ろうが何だろうが結果は同じなんですけどね。


そんなわけで中盤で大の苦手とする*1寝取られ展開に身悶えする苦しみを覚えたのもどこへやら。
終盤でのセラのあまりの変わりように傷心です。
といってもそれは所詮勝手なイメージを抱いて勝手にショックを受けたってだけの話で、格別不満や文句があるわけでもなし。
作品として面白くすばらしいことは1巻同様揺ぎないものがあります。
兎に角これは3巻も早急に読まねば…。

*1:そんなわけないし元鞘に納まると解ってても感情移入し易すぎるのでどうしても苦手