とらドラ! 9

とらドラ!〈9〉 (電撃文庫)

とらドラ!〈9〉 (電撃文庫)

  • 今回の名場面

「高須くんにそんなこと言う資格ある!?」
「あたしが悩んでるときにも、傷ついてるときも、いっつもいっつも気づいてくれなかったじゃん!あんたは、いっつも、あたしのことには気づいてくれなかった!」
「知るかよ!?わかんねえよ!俺だって、そんなにうまくできねえんだよ!」
「だったら余計なこと言わないでよ!あんたなんか・・・・・・っ!あんたとなんか、会わなかったらよかった・・・・・・」
地の文、略(141頁)
なかなか本音を出さない亜美ですが、これは・・・。
「あんたとなんか」と言い直す前の「あんたなんか」に続く言葉は何だったのか。想像を掻き立てられるシーン。


竜児は実乃梨を想い、実乃梨は大河のことを想い、大河は実乃梨と竜児を想ってそれぞれ空回り。
そして一人それを傍からすべて見てきた亜美・・・。
合わない歯車を回し続けて生じた摩擦が、ついに歯車そのものを壊してしまった8巻の続き。
公言通りのスピードリリース。


急転直下の展開となり、遅まきながら佳境入りした観のある前回。
ひとつところに生まれた亀裂が次々と他へと波及してバラバラになってしまいました。
そして今回、全部とは行かなくともある程度のものが修復されました。
ましたが、また別なところに新たな亀裂が・・・。


竜児が悪いのでもなく、泰子が悪いのでもない。
あるいは、竜児も悪いが泰子も悪いのか。
ここでもやはり噛み合わないそれぞれの想い。
竜児のために頑張る人が居て、頑張りすぎるその姿を見てかえって苦しむ竜児が居て。
血縁とは時に理性や合理性など軽く吹き飛ばしてしまうが故に、一度かけられたエンジンは易々とは止まらない。
けれど、それを止めるために「そんなことしてくれなんて頼んでいない。ありがた迷惑だ。」などと言えるはずもなかった。
なかったはずなのに、実乃梨のこと、大河のこと、自分のこと・・・悩みを抱えすぎた竜児はパンクしてしまい、ついにその決定的な一言をぶつけてしまい・・・。
更に、今度は大河の母親が現れて!?



というところで次巻へ。
どれが正しいとも言えないけれど、8巻で大河の気持ちも分かれば実乃梨の気持ちもわかる。そして亜美も。
それぞれに感情移入できるが故にああどうすれば、と読者まで悩まされましたが、竜児の気持ちも分かるし康子の気持ちも分かる今回もまた読者にとってなかなか辛い展開が続きます。
そして2巻続けてのto be continuedに先が気になり、焦れる思いが募ります。
また、修復しようがないように思えるほどこれまでになく深いこの亀裂は直るのか、どう直されるのか竹宮さんの手腕に期待です。


ちなみに今回でようやく実乃梨の胸の内を想像するのではなく、ハッキリと知ることができました。
間違っているかも知れない事にも臆せず自分を信じ、盲目なまでに直進するのは何故か。
また、何故あれほどまでにバイトに勤しむのか。
ここ最近の話の流れから強引過ぎる彼女の株を落としていたのですが、その原動力を知って評価改め。
ネタバレにさえならなければ、夢を語ったあのシーンを今回の名場面に推したかったくらいです。


その点、最近の北村は本当に空気だなぁ・・・。
毒にも薬にもなっていないです。
すみれの一件で燃え尽きたでしょうか。頑張れ眼鏡(笑)。