ソウルソードスーパースター 上〜接触篇〜

あの森橋ビンゴ、と言って分かる人はそう多くないと思いますが、『三月、七日。』や『青春時計』(共著)でファンを持つ森橋さんの新作。
今回はよくある現代ファンタジーが題材。
『三月、七日。』のイメージが強いので、意外という印象がある。


設定や概要はポピュラーな高校生がある日突然常識を超越した異能の力が飛び交う世界に巻き込まれるというポピュラーなもの。
但し、巻き込まれて以後の展開が丁寧で惹きこむ力が普通以上。
一般的には主人公は平凡な日常の裏で繰り広げられる現実を目の当たりにすると正義感に目覚めるか、家族や友人を殺された怒りで即座に決意を胸に立ち上がり戦い始めるのが王道の展開です。
悪く言えばありきたりでマンネリ。
また、いくら日頃ゲームや漫画などでそういった展開に慣れ親しんでいる者でも、やはりいざそれが現実となればそう易々とは受け入れられないのが当然のはず。
ですが大概の主人公は非日常の世界に直面してもすぐに、「そうなんですか。事情は分かりました。じゃあ今日から頑張ります。」とあっさり甘受。
どうにもこの展開が不自然…もっと言えば都合が良すぎて安っぽく嘘臭い。


が、本作はすぐにそういった展開には走らず、きちんと主人公が非日常を理解する過程を描き、その果てに覚悟と決意をもって事態に臨むまでを丁寧に消化しています。
言葉にすれば単純なことですが、これが・・・すごく良い。
これだけがこの作品を面白くさせている要素と言うと極論すぎるが、それ程に。
何分その他のことに目を向ければ幼馴染とその役割、主人公の家庭環境やヒロイン(と思しき子)など諸々の設定や展開は王道のものであり、これといって特筆すべき点はありません。
無論、森橋さんならではのテキストの妙味は別としてあります。
すぐにでも下巻も読もう!そう思える作品。


尚、直接内容とは関係ありませんが、挿絵がどう見てもやっつけ仕事に見えるためいっそ挿絵はない方が良かったように思えます。
これ本当に『ブギーポップ』シリーズなどにもイラストを提供している緒方さん?と疑問を抱くほど。