ナインの契約書 2

死後の魂の永遠の束縛と引き換えに願いをひとつだけ叶えるという悪魔の目を通して描かれる人々の物語。
九が出会う人々は不思議と誰もが自分のことではなく、他人を想って願い事を口にする。
それは儚くて優しい自己犠牲。
これからじゃない。いま、きみをたすけたい。



2巻ですー。
銃姫がぱったり止まってしまっているMF文庫Jにおいて、いま一番楽しみな一作。
今回も基本構造は3本立て。
 ある事をきっかけに学校で爪弾き者となった僕と変わり者のアイツ。
いつもおかしなことばかりうそぶくアイツは今日も僕にモデルガンを突きつけこういった。
「ハルカ、本当は人造人間なの。組織に追われてるから人質になって欲しい。」
そういって連れ出されたのはただの花火大会だったのだけど・・・。


 無為に人生を生きることに諦観を覚えたあたし。
学校へ行くのも辞め、毎日庭弄りに勤しむようになった。
そんなあたしを気にかけてくれているのか、毎日顔を出しにくるクラスメイト。
今日も彼を適当にあしらったある日、昔の同級生が通り魔に殺されたという話を耳にする。
そして何の気なしにネットの掲示板を覗いたあたしはその事件と他の事件に関連性を見出し・・・。


 このクラスには一人生徒が多い。
誰もその事に気付いていないけれど、ボクだけは気付いたんだ。
だからボクは、コイツが怪しいと当たりをつけた那須広海の後をつけたのだけど・・・。


どれもこれも導入から想像したものと実際の結末が大いに異なり、良い意味で裏切られる。
物語はいつも薄曇りのような雰囲気をまとい、すっきりとしない空模様から始まる。
だけど物語が終わる頃に空を見上げると、そこには少し晴れ間が射していて・・・。
独特の雰囲気とちょっとのミステリー、そして切ない物語の調和が好き。


ちなみに最後の一本はこの例にあてはまらず、例外的。
主人公の性質に合わせ、冒頭からコミカルな調子で始まっています。
主人公が真実に気付いた後半からはいつもの調子に戻りますが、それまでは地の文の雰囲気からして違ったりしますので、話に合わせて書き分けている印象が強い。
この転調は意外でもあったので面白かったですね。


尚、この巻から個々のエピソードの裏でもうひとつ、九を中心とした物語が進行し始めます。
話としては、九の他にも悪魔が登場。
規則違反やそれに近しい行為をし、どことなく人間に与するような行動の目立つ九を敵対視するその悪魔が・・・というもの。
まあ、しにバラなどの先駆者にも見られた王道的展開ではあります。