彼女は戦争妖精 4

彼女は戦争妖精 4 (ファミ通文庫)

彼女は戦争妖精 4 (ファミ通文庫)

半ば言いがかりに近い理由を掲げ、伊織へと怒りの刃を向けてきたパトリック。
彼の存在、そして彼が狙う“妖精の書”なる得体の知れない本。
クリスとルテティアの面倒を見るだけで手一杯なところへ更に多くの問題を一度に抱えることとなった伊織。
更には、そこへ輪をかけてさつきまでもが彼を悩ます存在となり・・・。

苦難と災難、そして覚醒の第4巻。


早くも4巻です。
同時期に1巻が出た三ツ星生徒会などが3巻を出してきた今月にもう4巻です。
評判通り筆が速い作家さんなんすねー。
嬉野仕事はやくてうれしーの。



さて、前回しつこそうな奴に絡まれた伊織。
家は家で面倒な居候が一人増えましたし、気の休まるところがない様子。
そして伊織がそんな状況に慌しく追われている最中にも、彼のあずかり知らぬ所では様々な思惑が入り乱れつつ不穏な気配を見せていて・・・という第4巻。


まずはバトル方面に関して。
今回は個々の規模は大きくない(=さほど頁数を費やしていない)ものの3つの戦いの局面が描かれます。
ひとつは著者自身まさかのレギュラーキャラとなった健二vs???
ふたつめに、常葉vsとある人物
そして、伊織vsパトリックです。
しかしパトリック戦に関しては、伊織がいよいよ主人公補正の本領を発揮といった調子。
まさにチート全開の無双状態に等しい。
真相や力の源などまだ詳細は不明ですが、あまり勝負としての見所はないかも知れません。
それよりも、個々の戦いとしてならば常葉や健二の方が面白いです。


とはいえ、これは王道というよりも他に手段がなく、この手の作品のジレンマとも言えるので仕方ない側面も・・・。

  • 主人公はつい最近まで普通の暮らしをしていた一般人
  • 巻き込まれる形で異能の世界入り=後発組
  • しかし何歩も先を行っている先達を相手に同等以上の戦いを繰り広げなければならない
  • 才能や選ばれし者であるなど「特別な力」を有することで彼我のギャップを埋める

となるわけで、まあ、ある種必須条件なのかな、と。
肝心なのはその超設定による勝利が頻発しないことにあると思いますので、実質初回となる今回だけでは良し悪しについては何とも言えないものがあります。
主人公伊織の「戦いの魅力」に関しては今後次第でしょうか。


他方、バトル以外のところでは立ち位置的に最も正ヒロインに近いさつきの出番がとても多いです。
しかし今回は出番の多さに反比例して、伊織視点からだけでなく読者から見ても悲しいかな、ひたすら株を下げただけという印象。
伊織に対する好意はいっそ怖いくらいのものがありましたし(俗に言うヤンデレの気配?)、元々の性格が概ね二者に分類されるヒロインの性格像の中でもサバサバした押しのタイプではなく(本作ではルテティアがこっちですね)、うじうじする引きの方であるだけに尚更・・・といった感じ。
現状では、作中の女性陣で最も魅力がない人物になってしまってますね・・・。
(まあ、全ては伊織とくっつく可能性はゼロなのに常葉さんが素敵すぎるからいけないんですけど!)
ただ、一応ひとつ目の山は越えましたし、彼女の扱いや物語への関わり方は今後の展開に委ねられている部分も多いため、「これきり」というよりも「これから」の人ではあります。
それに、対する伊織の対応も何もそこまで・・・と思うほどにドライなので、共感はできなくとも同情は禁じ得ないところがあります。


ちなみに。
3巻ではのらりくらりと伊織の追及をかわし、何か含むところがあることだけを匂わせつつもこれといって何もアクションを取ってこなかったルテティアですが、今回は少し違います。

  • 異性としてロードに選びたかった本当の相手はもういない?
  • 仮にそうだとして、頼通ならば代役に申し分ないのだが、相性が良くない そして多分頼通にもその気がない
  • だからとて、このままいつまでもロードなしでは自分の身ひとつ守れない
  • となれば、暫定的にせよ恒久的にせよ“異性じゃない者”をロードに選べば良いわけで・・・

と、こんな風に推察できる流れがありまして、なかなか興味深い展開が見られます。


そして個人的にコレが今回一番のポイントなのですが、
先生!薬子さんがコワイです!助けてください!
あ・・・、その薬子さんが先生なのか。参ったね、こりゃどうにも。

とかいう冗談はさておき、かなりの力を持っていながら積極的には動かず、さり気なく漁夫の利して必要なものだけかっさらっていく薬子さんが冗談抜きに恐ろしいです。
この作品一番の魔物で、最上級の曲者であり、最大の波乱要因は彼女かも知れない。
その辺すごく楽しみです、本当に。


が、残念ながら次巻はこの話の続きではなく、ファミ通文庫HP上に掲載された短編に書き下ろしを含めた短編集であるとのこと。
刊行ペースが早いので短編を間に挟むだけならそう間は空かないと思いますが、さすがにまったく同じペースとは行かなさそうです。

  • 今回の名場面

「わたしはこの子を守ると決めた!そのための戦いから逃げるつもりはない!いかにもそれがわたしの選んだ道だ!」(216頁)
常葉さんサイコーだよ常葉さん。
そしてこの科白の後にこう続ける人物が居ます。
「・・・・・・いい覚悟だ。男でないのが残念だな・・・・・・。」
いや、むしろ女性なのにこれだから良いわけで。
常葉さんサイコーだよ常葉さん。