シュガーダーク 埋められた闇と少女

過去14回の歴史において3度しか輩出されていないというスニーカー大賞《大賞》
今回、6年ぶりに4例目となる受賞作が生まれた!というふれこみで話題になった一作。
早速、読んでみました。


ここはまず、スマートに結論から先に言ってしまいます。
面白いです。
大賞受賞作がいかほどのものか、自分で読んで確かめてみるくらいの価値は間違いなく持ち合わせています。
世間のああだこうだという評判を様子見するぐらいであれば、読んだ方が早いです。
(完全に蛇足ですが、『イリヤの空、UFOの夏』や『ミミズクと夜の王』などが好きな人には尚のことお奨めです。)


というわけで、これから自分がやろうとしていることを真っ向否定してしまったわけですが、それでも一応書きます。
はじめに概要から。
少年は、冤罪により共同霊園での墓穴掘りの労役を科されることとなった。
墓地だということを差し引いても得も言われぬ不快感を感じる土地。
人を埋めるには馬鹿でかい墓穴。
そして、夜にしか会うことのできない謎めいた少女。
この場からいずれ脱走を成し遂げると決意を固め、労役に励み始めた彼であったが、少女と関わり、墓地に秘められた真実を知るにつけ、彼の胸には当初とは異なる想いが去来して・・・。



という流れの伝統的ボーイミーツガールです。
ファンタジー作品ではありますが、ラブコメでもなければ能力バトル・・・果てや救世モノでもなく、全体のテイストはかなり落ち着いた雰囲気。
そして、推理小説とはまた異なる趣きのミステリアスな感じも頁をめくる手を速める引力があります。
また、情景などの描写力にも優れたところがあり、想像するにたやすく、手に取るように感覚が掴めるので読みやすい。
角川の戦略により、話題ばかりが先行してしまいハードルが高くなっているきらいがありますが、ひとつの作品として純粋に見れば傑作とまでは言えないもののなかなかの秀作といえるかと思います。


尚、あとがきにて続編が刊行される旨が明言されています。
これに関しては賛否あるかと思いますが、個人的には不要の一点張り。
これは「続きが出たとして初回作を越えられるか否か」云々の話ではなく、続きが出てしまうことで本作が完結作品ではなくなってしまうことが残念だからです。
本作はこのまま一個の完成した作品として大事にして欲しかったかな、と。
お金儲け主義の角川の悪い癖が出たか・・・という思いを禁じえず。
無論、そういった点を除けばこの作者の次なる作品はそれが何であれとても楽しみです。
角川さんには、妙な形で使い潰さず大事にしてもらいたいところ。