乙嫁語り 1

乙嫁語り 1巻 (BEAM COMIX)

『エマ』でよく知られる森薫さんの最新作。
エマは何となく好みに合わずまったく読んでいなかったのですが、本作はピンとくるものがあったのでチャレンジ。
個人的に初の森薫作品ということになりますが、なるほど納得のクオリティ。


舞台は中央アジア。時は19世紀。
山向こうからエイホン家にやってきた花嫁アミル。
8つも歳が離れた花婿と仲睦まじく、一族にも受け入れられ穏やかな日々を送っている。


という出だしから始まる作品です。
20歳で12歳の男の子のところに嫁いでくるわけですが、この時代・この地方の風習では20歳は既に行き遅れとも言える年齢だったりします。
ところが、アミルを嫁に出したハルガル家の諸事情（主に政治的な）からまだ子供を授かっていないならアミルを返せという要求が突きつけられて･･･。
というのが軸となるストーリーでしょうか。


ただ、どちらかというとそういったストーリー展開を読む作品ではないように思えます。
それよりも機械も電気もない異国情緒あふれる“民族の暮らし”の風景を堪能するのがふさわしい感じ。
事実、台詞はかなり絞られており、絵で魅せる・語る作りになっています。
アミルを取り巻く部族間のいさかいがおおごとに発展するなどすれば、またストーリーの面でも読ませる作品となり、二重の魅力が増してくることと思いますが、当面はこれだけでも十分以上に満足の出来。
特殊な世界や独自の設定、複雑な組織関係などであふれる作品に疲れた時におすすめです。