マルドゥック・スクランブル 1

マルドゥック・スクランブル(1) (少年マガジンKC)

マルドゥック・スクランブル(1) (少年マガジンKC)

GONZOによるアニメ化が立ち消えになっておよそ3年。
劇場アニメ化、漫画化とにわかに沸き立つマルドゥックシリーズの機運。
本作は、そのシリーズの最初期作『マルドゥック・スクランブル』のコミカライズである。


さて、何故か今頃になってまさかの漫画化が実現したマルドゥック・スクランブルの第1巻です。
ジャンルとしてはハードSF及びアクションで、導入は次のとおり。

街の闇の権力者によって突如殺されかけた身寄りのない少女バロット。
車ごと炎上するという大惨事により重症を負うが、人命救助を目的とした特別法令によって超高度の科学・医療技術が駆使され一命を取り留める。
そして、彼女を救った“ドクター”らから首謀者を逮捕すべく協力を求められたのだが・・・。

となっており、身寄りもなく楽しみもない彼女は生きることに意味を見出せず、当初その申し出を断ります。
しかし、彼女のパートナーとなるネズミ(型の人工知能兵器)“ウフコック”の説得が奏功し、「幸せに生きること」の答えを探すべく戸惑いながらも第一歩を踏み出すというのがおおよその1巻の流れです。


以上は原作及び漫画に共通する作品の世界の話。
次にこの漫画そのものの話になりますが、クオリティはかなり高いと思います。
作者が原作の複雑難解な世界をよく消化して理解している印象。
これならば原作を知らず漫画から作品に入っても平気だと思われる。
作画の面では新人ということもありまだ不慣れな部分も見受けられるが、下手なのとは違い、連載で回を重ねることでより良くなっていきそう。
何より、既にして作画に「自分の味」があるのが良いです。
美少女キャラクターを描くことに特化しており、誰かの模倣でしかない作者が少なくないいま、この独特の画風は期待がもてます。


ただ、ボイルドがスラっとした長身でちょっと若すぎる人物に見える点だけは、いち原作ファンとして気にならなくもない。
もう少しガタイが良くて適度に老け(というか人生に疲れた感じ)が見られると良かったかな。


総じて、漫画化するには大分ハードルが高いと思われる作品のコミカライズとしては初回からかなりの好印象。
原作が全3巻と適度なボリュームで完結している点もアドバンテージとなりそう。
今後も大変楽しみな一作です。