彼女は戦争妖精 7

彼女は戦争妖精7 (ファミ通文庫)

彼女は戦争妖精7 (ファミ通文庫)

イソウドの奸計であったとはいえ、ロードでは決して力及ばぬとされていたミンストレルたるペルスヴァルを屠った伊織たち。
かねてからの懸案であった薬子との関係も大きな転機を迎え、いよいよ物語は最終局面へ。
そして、伊織はひとつの大きな境界線をついに越えてしまう・・・。
年内完結が予測される第7巻。


さて、倒せるはずがなく、倒してもいけなかったであろうミンストレルをやってしまったことがどんな事態を招くのか懸念された中で迎えたこの7巻。
意外にも他のミンストレル連中には今のところ目立った反応はなく、この点に関しては一安心と同時にやや拍子抜け。


一方で、薬子問題はいよいよ燻っていたものが着火したといった様相を呈しており、もう元通りとなることは叶わなさそう。
次の焦点は、この先彼女が障害として前に立ちはだかることになるかどうかに移ったと言える。
ただ単に道が分かれただけなのと、交錯するのとでは大違いだ。


その他では、5巻にて遅まきながらも戦列に参加することとなったさつき・ルテティアペアも今回大きな転機を迎えている。
現状ただの足手まといでしかない彼女は、果たしてこのまま戦列に留まるのか、それとも・・・。
仮に留まった場合、彼女の存在がどういった悲劇or波乱の元凶となるかが気掛かりだ。
(良い方向に作用しないことはもはや確定的。)


そして主人公たる伊織はと言うと、大人の階段を昇りました。
親戚の家で、子供が寝ている隣で、まさかの───。
信じらんねぇ・・・。
あの伊織にこういった展開が生じたことも驚きだが、時と場所を選ばぬ若気の至りにも驚き。
更に言えば、相手となったのが常葉というのもやや驚き。
さつきよりは遥かに芽があり、良い関係になるだろうとは考えていたもののかつての失恋の件もあることだし、きっちりかっちり名実共に・・・といった形にはならず、互いの気持ちには気付きつつも曖昧なままで終わると思っていたのが浅はかだった。
そうかーそうかー、トッキーがねぇ。
しかしまあ、こうなってくるとさつきのこともあるので、かえって心配事が増えたようであまり素直に喜べないようにも思う。
著者が嬉野さんであるだけに、下手すると本当に・・・。
ああ、考えたくもない。


閑話休題
今回伊織は上述の点のほかにもうひとつ、冒頭にも書いた大きな転機を経験している。
これはもはや避けて通れぬ道であったし、その後の反応を見るにこの事が今後に多大な影響を及ぼすことはなさそうであるが、なんであれやってしまったものはやってしまったということで、7巻の注目点のひとつに挙げられる。


これに付随して、本編ではこの巻が初登場であるものの小詩篇にて既に出番のあったペアが1組リタイアとなっている。
暗くて辛い過去を抱え、苦しんでいたらしきこの人物。
さりとて回想などを挟んでその点を掘り下げて同情を誘ったりはせず、排除すべき敵は敵としたまま幕を閉じさせた点はさすがの嬉野さんと評価したい。
やられ役の敵にもお涙頂戴の背景を持たせて重厚な物語を書いたんです!というのはよく見られるケースだけれど、大抵の場合は作家の自己満足や蛇足でしかないし・・・。


以上、7巻についてでした。
次は8巻の発売の前に、10年前の薬子と伊織を描いた中編を含む小詩篇3巻が刊行される。
尚、あとがきでは2月予定となっていたが、現状では今月28日に発売が予定されている。