死がふたりを分かつまで 15

遥の身柄を狙い、ガルボアから差し向けられた精鋭部隊『トランプ』。
不敵にも宣戦布告をした上で学園に侵攻をかけてくる彼ら。
対する護たちは、連携の悪い混成軍。
この状況で、被害を出さずに彼らを退けることができるのか・・・。
新展開がいよいよ本格スタートされた第15巻。


さて、14巻の後半で導入が描かれた新展開がこの巻から本格化。
護だけではなく各々のスタイルを持つ複数の達人が、奇天烈な攻撃手段を持つ連中相手に立ち回りを繰り広げるというのが今回の見所。
本作の持つアクション性を十分に知るかねてからの読者にとって興奮を掻き立てられる内容となっている。


ただ、どうにも『トランプ』の持つテクノロジーや技術が胡散臭いのが難点。
フィクションであり軽い近未来SFでもある本作は、これまでにも数々のオーバーテクノロジーを披露してきているが、どれも「いまの技術では実現不可能だろうけどあり得なくはなさそう」という絶妙な水準が保たれた魅力的なものだった。
しかし今回に至っては、そのバランスが急に崩壊したように思えてならない。
具体的には、不可視の敵(有り体に言えば透明人間)であるとか、微動だにせずに相手を切り刻むことのできる敵などである。
無論、これらも超能力といったことはなく、本作の性質上なんらかのタネがあるものと思われるが、後のことがどうであれタネが明かされていない現状では超能力としか思えないのでは興が削がれるのも事実。
面白くしようと工夫を凝らしすぎたばかりに、妙なインフレに突入しているような観がして残念であった。
これが今回の相手に限ったことであるのか、この学園編以降の相手にも共通し始めるのかが気懸かりだ。


ちなみに、物語の展開そのものはまだ1/3程度といった塩梅。
少なくとも16巻丸々いっぱいは対『トランプ』編が展開されそう。
普通に見積もると、17巻まで跨るものと思われる。
次巻は、護や他の人と違い今回はほとんど活躍が見られず窮地に追い詰められる描写しかなかったジーザスの見せ場に期待。


尚、巻末には特別編として、護と出会う以前の遥の物語が載っている。