ストライクウィッチーズ零 1937 扶桑海事変 1

時は1936年。
第一次大戦より20年ほどを経て、世界は安寧を取り戻しつつあった。
しかしそれは、恒久的平和ではなく新たな嵐の前の静けさに過ぎなかった・・・。
これは、そんな時代を戦い抜いた坂本美緒とその戦友達の物語である。
ここでもやはり「わたしにできること」がキーフレーズ。


さて、そういったわけで大人気TVアニメーションシリーズより以前の時代を描いた公式作品となる本作。
冒頭では1936年と記載したが、表題からもお分かり頂ける通り本編の始まりは1937年から。
まだ坂本が12歳の頃のお話である。


とはいえ、開始早々に『扶桑海事変』へと突入するのではなく、この第1巻はそこへ至るまでの導入となっている。
つまるところまだ一度も空を飛んだことがない坂本を含め、当時は駆け出しのひよっ子に過ぎなかった少女たちが、諸先輩方から学び、実戦を重ねることで成長していく姿が丁寧に描かれているのである。
これが実に良く出来た物語となっており、更には他のコミカライズでは目にできないようなしっかりとした空戦描写がそれを補強している。


また、作画の方もそうした内容を描くに足る力量を伴っている。
しかもこれが初作品だというのだから「初陣でこれだけの戦果をあげるとは、こいつ・・・只者ではないぞ!」といった塩梅だ。


総じて一介のファンサービスと言うには余る良作であり、アニメで当シリーズに触れたことがない人にも手にとってみて頂きたい。
既にアニメなどで当シリーズに馴染みがある人を第一の対象としているだけに余人にとっては世界観や設定などの説明が足りず、やや理解に苦しむことはあるかも知れないが、それを差し引いても十分に楽しめるかと思われる。


尚、巻末にはちょっとした設定資料と四コマ漫画がオマケとして収録されている。
それと、見る人が見れば分かることではあるが、坂本ではないもう一人の表紙の女の子は、パッと見は宮藤に見えるがそうではない。