ベン・トー 8 超大盛りスタミナ弁当クリスマス特別版1250円

年の瀬も迫る十二月。
学生生活における一年の最後は、世間のそれよりも一週間ほど早い。
わけても今年の烏田高校の終業式はクリスマスより前である。
故に、佐藤は著我と、白粉は白梅と・・・そして槍水は実家に帰り、茉莉花と共にクリスマスを過ごす。
かに思われたのだが・・・。


このラノ3位&アニメ化でいまだかつてないほど注目度の高まったいま、渾身の力で繰り出される最新第8巻。


さて、冒頭のくだりから類推して欲しいのだが、8巻ではHP同好会内で人間関係に摩擦が生じてしまう。
これまでにあったいざこざや軋轢と言えば、モナーク(パッドフット)や烏頭のように新顔との間によるものであった。
それが今回は、今まで円満極まりなかった間柄に起こるというかつてない展開を迎えており、非常に心がざわつく話の流れとなっている。
しかしながらそうであるが故に、大団円でもって締め括られるラストの感慨も格別だ。
俗に言うカタルシス効果の大きな物語だと言えよう。


また、この巻ではこれまでのような新顔の登場はなく、すべて既存の登場人物だけで固められた構成となっている。
さらに構成だけでなく物語の流れにおいてもこれまでの集大成といった様相を呈している面があり、ともすれば最終巻かと紛うような充実ぶりである。
そしてその物語の中心には久方ぶりと言って良いだろうか、槍水が据えられており、意外なようでいてどこが非常に納得できる展開が披露される。


というのも無敗に近い強さを誇る氷結の魔女として、そして何よりHP同好会の会長として頼れる先輩であり続けるのが、本作における槍水の姿である。
しかし愛読者であれば、彼女のその強さや先輩然とした振る舞いに一度くらいは疑問や危うさを感じたことがあるものと思われる。
今回はまさにその感覚が錯覚ではなく、悪い予感が現実となるかのような形となって物語に現出しているのだ。


その他、二つ名持ちが新たに二名増えたことも記しておきたい。
その詳細は読んでのお楽しみとなるため書けないが、どちらも「ついにあの人物が!」というにふさわしい両名である。
ただし、一方はある人物によって名付けられた直後であり、それがきちんと伝播し定着するかは次巻の楽しみのひとつといった塩梅である。
そしてこれに加えて、このところ静観を決め込んでいるあの人物が何やら思わせぶりな言動を発したこと。
年も明け新学期が始まると学年が上がる時期が近くなること。
この3点などが次巻へ向けて期待高まる要素だろうか。
どうやら『ベン・トー』の熱はまだまだ冷めやりそうにない。


尚、今回も著我は本筋への深い関与はなし。
第一章でニヨニヨできる佐藤とのいちゃこらぶりを披露するに留まり、それとは反対に丸冨勢からはオルトロスと二階堂がこれでもかというほどの出番と関わりを発揮している。
てゆーか姉トロスこと梗が可愛すぎて「佐藤爆発しろ」モノである。