わたしたちの田村くん 1


2巻読み切りで完結した電撃文庫の同名作品のコミカライズ。
俺─田村雪貞─が中学三年の時の同級生─松澤小巻─
進路希望で「故郷の星へ帰る」と回答し続けた寡黙で不思議な雰囲気をまとう少女。
そして高校生になった俺の同級生─相馬広香─
傲慢・高圧的で他人にキツく当たる少女。
そんな彼女が不意にみせた、松澤と同じあの哀しげな表情が俺は気にかかり…



まず何といっても絵が超ナイスキャスティング!
どうやら新人さんのようだけど良く見つけてきたなぁ、と感心せざるを得ない。
原作の雰囲気を巧く表現しつつ、活字のみだった各場面を素晴らしい画に起こしてくれてます。
また、原作が既に完結している+短い作品だっただけにストーリーのまとまりも良く好印象。
しかもただ再現してなぞるだけではなく、「まず中学期の話を一気にやりその後高校期が描かれる」という原作1巻の構成を「高校期を現在の時間軸に置き、中学期を過去“高校期の回想”として展開する」ものに変えています。
この工夫の甲斐あって、読み手は松澤と相馬それぞれと田村との物語をほぼ均等、同時進行で堪能できるというわけ。
これは小説に比べ1冊に収まる物語の量が欠ける漫画に1巻から松澤・相馬両名を登場させる最善の手なんじゃないかと。
この構成でなかったらおそらく、3巻くらいまで相馬が出てこず、逆に3巻以降は当分の間松澤が出てこないという非常に偏ったものに…。
というわけで、構成力・作画どちらをとっても良質なコミカライズ、漫画化の好例。
原作読んでて今後の展開も知り尽くしてるのに、漫画ならではの良さ・小説とは別の描き方の魅力があるから2巻が非常に待ち遠しいっすよ。


尚、ベタでコテコテありきたりなラブコメ…ではないので、そう思っていた方は見る目を変えてみて下さい。
結構、いやかなり?良い話ですよー。
たしかにコメディ的な部分もなくはないですが、基本は淡い感動の青春物語です。