DDD 1

DDD 1 (講談社BOX)

DDD 1 (講談社BOX)

  • ココにゾクゾク「──ダズゲデヨォ、ゼンバァイ」  焼け爛れた女の声がして、切れた。(73頁)

ゾクゾクっつーかもう、血が沸騰、的な。
「勘弁してよー、こういうのはさぁ…」って感じ。
ほんま、きのこさんは恐ろしい人です。あぁ嫌だ嫌だ(誉めてます)。


かなり遅くなりましたが*1、ようやく…。
空の境界』以来のきのこさんの新作です。
但し、一部を除き再録のため、書き下ろし作品ではありません。


感染者の精神のみならず、肉体も変貌させる奇病─アゴニスト異常症─が確認され、感染者による様々な社会問題が生じ始めた世界。
通称“悪魔憑き”と呼ばれる感染者は、常人にない体の部位又は能力─新部─を有す病人である。
病人である以上、犯した罪は往々にして不問、保護の対象となる。
この物語は、その“悪魔憑き”を身内にもち、紛い物であるところの“悪魔憑き”を凌ぐホンモノの悪魔と関わりを持つ隻腕のプー太郎─石杖所在*2─を中心とした物語である。



新部は外面上に限らず時に内包状態で発現することもありますが、A異常症ってのは大雑把に言えばX-MENみたいな…いや、さすがに語弊がありすぎるかも。
まあ、何にせよ病気なので弱ってる人弱い人が罹ります。
(事実はともかくそういう認識が全員ではないものの、作中の人物にされてるのは確かです)
で、弱いのに超越した力を手にしちゃうもんだから、大抵の場合おかしくなりますね。
じゃあ、そのおかしくなった人をどうするのか、排除するのか保護するのか。
主題ではないものの、一応そんな話もあったりなかったり。


空の境界』との比較で語りますと、章ごと節ごとに時間軸がバラバラ点在状態な構成は変わらず。
その点に配慮しての年表も変わらずにちゃんとあります。
違う点は、文章の雰囲気ですかね。
何と言うか、前は厳つい持って回した表現の堅い印象でしたが、今回は主役?のアリカのキャラクター性も手伝ってかなりフランクな感じ。
重厚さが薄まった代わりにとっつき易さが増した、というところ。
これらとは逆に、明らかになくなった要素もあります。
まあ、何かと言えば『空の境界』では、式にぞっこんラブな幹也とそっけない式というある意味恋愛的なものがありましたが、今回は1巻を読んだ限りにおいてはそういうのはないですねー。
せいぜいが、アリカを慕って付きまとう可愛い後輩が居るくらい。
その他、アリカの妹や『空の境界』の橙子(眼鏡なしver)ばりにおっかない年上の女性など女性の方が多いですが、やはりそういう話はなし。
こと「分かり易くシンプル」という点に置いては『DDD』の方が圧倒しています。
とはいえ、それでもやはりトリッキーな文章構成による「人物Aを中心にした章だと思って読んでたものが、実は人物Bが中心の話だった」と後になって分かるいやらしく小憎くも面白いアレは健在。
総じて、なかなかの充実振りじゃないかと思います。


ちなみに、『空の境界』が映画化されるそうです。
「あの空の境界が実写化!」…ではない、ってだけでもうかなりの部分安心して完成を待てますが、正式に企画が公表されただけで詳しい情報はまだまだの模様。
http://www.karanokyoukai.com/
こちらがオフィシャルになってますので、気になる方はご覧下さい。

*1:欄外で愚痴りますが、予約したにも関わらず発売後10日以上経って「用意できませんでした」という連絡が日販から…。おいおい、Amazonならいざしらず日本最大の取次がそれで良いのか、と。予約してあるからって発売日に最寄の書店に置いてあるのスルーしたんだぞゴルァ、と。おかげさまで奈須作品に付き物の「発売後即品薄状態」に巻き込まれ、ちっとも手に入らなくて苦労しました。『空の境界』の時に1冊読むのに物凄い時間を要したので、そっちで感想が遅れるかと思いきや、読了にはあまり時間がかからず済んだのに結局これです。月初の予定表にあるのを見て「とうに発売しとるわ。感想まだかよボケ」と思われた方、申し訳ありません。

*2:いしづえありか