ミミズクと夜の王

ミミズクと夜の王 (電撃文庫)

ミミズクと夜の王 (電撃文庫)

  • ココにジンときた :ディアの言葉「ぼくは、お前にたくさんのものをもらったから。教えてくれたから。もう、いいんだよ」(246頁)

「だって、ミィは友達なんだ!」と王子は言った。


ズドンとミットの真ん中に痺れるようなストレートーーー!!
その直球、しかと受け取りました!
これこそ紛うことなき純生純正純粋なる小説ぅぅぅ!
驕りなく衒いなく狙いない、純粋なるおとぎ話の魅力で充満した作品。
学園ものでも冒険ものでもラブコメでもバトルものでもシリーズものでもないけれど、いっそライトノベルでもないけれど、それでも一番のライトノベルです。
これは一般文芸で出しても十分通用するでしょう。
紅玉いづき、近いうちに必ず電撃のハードカバーでその名を目にすることになろう。そう思いました。


あらすじは極めて単純。
誰もが忌避する魔物の棲む夜の森。
332の焼印と四肢に外れぬ鎖とただひとつの願い─喰われること─を携え、少女は森に入り込んだ。
そして出逢う、人嫌いの美しき夜の王に…。

解説者の有川さんも語られているように、世界像や細かい設定などの説明は一切なくとうとうと語られる物語です。
絶望と不幸の袋小路にありながら自分の境遇を真に理解することもなく“消えてしまう”ことだけを願った少女が、魔王と出逢い何を感じたのか。
そして“正しき人の世”に戻りその幸福を知った後に何を想い、何を望むのか。
最後にあるのは、相手を…その存在をこそ必要とする純愛です。