狼と香辛料 4

狼と香辛料 (4) (電撃文庫)

狼と香辛料 (4) (電撃文庫)

  • ココにしんみり :去り際に一言「旅人が村に残すのは未練ではなく良い思い出です。それでは」(343頁)

ロレンスがキザなこと言っちゃってます。
でも、良い言葉ですね。


すっかり人気が定着した観のある本作も4冊目、もうプロデビューから一周年だそうです。
内容の方も安定感が板についてきた感じですね。


二人はクメルスンで得た情報を頼りにホロの故郷ヨイツを探すため北のテレオへ。
テレオはいままで通ったきた街とは違い、田舎の村といった風情。
商いに活気付くこともなく、今回ばかりはロレンスの商売に関わるタネはありそうもない。
損得勘定なしで純粋にホロのために立ち寄ることになるが、またしても思わぬ厄介事に遭遇してしまう…。



今回は舞台となる場所も今までと趣が違えば、ストーリーの方もまた少しばかり毛色の違ったものになっています。
まず、前回とりわけその色が強かったハラハラドキドキの手に汗握る展開は鳴りを潜めた印象。
またトラブルに関しても、今回は中心にあるというよりは巻き込まれたといった方が正しいもの。
そして何より、相変わらずお互いに憎まれ口や皮肉を交し合うものの前回で信頼関係がしっかりと強固なものになったロレンスとホロは、険悪なムードやぎくしゃくした雰囲気になることがなく、ぶっちゃけ極端な終始いちゃいちゃしているだけ(笑)。
そんなわけで、二人の関係もストーリーも今回はかなり落ち着いたものになっています。
そういった意味では、前回あっての今回。
シリーズで最大の緊迫した状況を乗り越えた後の余韻を楽しむ感じといったところで、前回を踏まえずこれ単独で見るとあまりにも仲睦まじく、大した危機もないとあって何だか物足りないくらい。
ただそうは言っても、村の存亡の危機に関与しているので「大したことない」というのもおかしな話ですが…。
まあ、やはり一旦の小休止という巻であり「ヨイツに関する情報が少しなりとも得られた」点がキーでしょうか。
今までが今までだけに今回は読んでいる最中が随分楽でした(笑)。
いっつも張り詰めっぱなしがあんまりですからたまにはこんなのもいいなぁ、と思いましたね。
さて、次回はどうなることやら…。