オイレンシュピーゲル 1

  • ココにグッときた :遠まわしな謝辞「……支援を担う狙撃手ほど、その実、支援を必要とする者はない」(155頁)

素直じゃないなぁ、二人とも(笑)。


さて、同著者同時期刊行の『スプライトシュピーゲル』との連動作品の本作。
あちらとはパラレルではなく、純粋に同じ世界の話のようなので世界観とあらすじの説明は省きます。
詳しくはこちら、スプライトの感想をご参照下さい。
尚、物語としての誕生はこちらが先であり、あちらがこれを書いている時に後から生まれたそうです。


それではまず人物を。
・涼月:黒犬 ファイター 猪突猛進 1on1の決闘好きの暴れん坊将軍
・陽炎:紅犬 スナイパー 慇懃無礼 知識豊富でクールなへそ曲がり
・夕霧:白犬 アタッカー 天真爛漫 歌って踊れるハイテンション
3人で一小隊、遊撃小隊ケルベルス。


設定周りでのスプライトとの違いは、大きなものから細かいものまでいくつか。
1つ、あちらは妖精こちらは犬。3人とも飛行能力はなく、地上戦を担います。
2つ、あちらは公安MSS所属であり、云わば打って出てテトリストを狩るのが仕事なのに対し、こちらは警察MPB所属、襲ってくるテロリストを振り払うのが仕事なため受身になりがち。
3つ、MSSでは長官から副官、三人娘までがよく通じ合っておりファミリー的でしたが、MPBは大組織でありケルベルス=手駒という扱いが見られ、冷たーい感じ。
また、元々は短編として一個の作品として完成していた第一話を更に書き進め文庫化しています。そのため、最初から短編をまとめて後々文庫化することを前提に書かれたあちらと違い、ストーリーごとの頁数が不揃い。
あちらがほぼ均等で6話入りだったのに対し、こちらは第二話だけで120頁以上あり3話収録です。


設定はこんな感じで、感想としてはこっちの方が好きですねー。
彼女らが特甲児童になる経緯や周囲の支援が乏しい状況など“くそったれ”具合で言うとこちらのがよっぽど酷くダーティですが、最低最悪の中でも「数少ない仲間とうまくやっているよ」って印象はその分強く感じられます。
何となく噛み合ってなく、取ってつけたようなトリオだったスプライトよりもケルベルスの方が凸凹しながらも調和の取れてる感じが良いですし。
どっちも読んでられない、どっちも買えない、どっちかだけとりあえず読んでみるetcの事情がある場合、個人的にはまず『オイレンシュピーゲル』を読むことをお勧めします。