ヴァンパイア十字界 9

  • ココにグッときたレティシア「ストラウス、ありがとう。あたしは忘れない。教えてくれた全部を、一緒にいてくれた時間を」(95頁)、ストラウスが最後に懐かしい一言を花雪からもらうシーン「あなたの魂にどうか月の恩寵がありますように」(213頁)

レティは良い子( ´;ω;`)


いまより千年は昔、夜の国と呼ばれるヴァンパイアの国に有能無欠にて他愛深き王が居ました。
しかし、火の打ち所もなき王が万策を尽しても全てが上手く運ぶことはありませんでした。
いえ、むしろ、その才が故に取り返しのつかぬ哀しき運命を呼び込んでしまったのです。
そして王は思ったのです。
すべての非は私にある。一族を、愛するものを救えなかったのは私の罪である、と。
それ以後、王はいと深き想いと信念を胸に秘め、我が身を削るような苦渋の道を歩みながら千年の時を生きました。
そしていま、長き旅路の果てを見る。



充実の内容、堂々の最終巻! といって良いのか悪いのか。
確かに全編通して重くて深い内容を見せ続けてくれましたが、無条件で賛美し両手を叩けるかというと、うーん…。
絵が物足りないのか、城平さんの台詞回しが今作もやはりいまひとつなのか、それともストーリー展開か。
これが!ってほどはっきりしたものがないのだけれど、どことなく物足りない。
或いはそれぞれがあとちょっと良ければ良かったのか。


ただ、あとがきで城平さんが危惧されているような終わり方への不満は特にないです。
創作物の非ハッピーエンドには慣れてますし、なんもかんも上手く行く最後ってのもどうかと思いますから、むしろこれぐらいが丁度良い収め方だったと思うくらい。
それにしてもストラウスは、最後の最後まで利己心のりの字もない聖人君子のような王でしたねぇ。
ストラウスがこうであってこその作品とも言えるのでここを真っ向否定するわけにはいきませんが、ストラウスがあまりにも完璧超人だったこともどこか作品のおもしろさに影を落としたのかも知れないですね。