シャイナ・ダルク〜黒き月の王と蒼碧の月の姫君〜 1

  • ココがシビれる :魔王逆鱗の一喝「帰れ(略)」(32〜33頁)

温厚な人ほど怒らせると怖いです。


数百年に一度蘇る魔の島─シャイナ・ダルク─そして、魔王─エクソダ・セロ・クラウ─
今再び復活の時を迎えた魔の象徴に世界は恐怖し、贄を捧げ、仮初の安息を得ようとする。
はずであったが、蘇りし魔王が成したことはと言えば…。

と、始まるちょっと異質のファンタジーもの。
早い話がよくある魔王討伐ものではありません。
むしろ、討伐される側の魔王が主役です。
その上魔王は残虐非道な行為や侵略活動は一切行わず、出来うる限り平和に暮らそうよ。なんて言い出す始末。
しかし、恐慌の元凶たる魔王がそれで良しと言えども、世界はそう都合良くは回らず…といったストーリーになります。


具体的には何がどう上手くいかないのかを説明しますと…。
・魔王の元へは世界中からうら若き乙女が生贄として送り込まれました。
・東西の王国からは、二人の姫君までもが妾に差し出されました。
・しかし実際の魔王は伝承のような行いはせず、妾との交わりもしませんでした。
・島へ送られた女性はその役割と意義と失いました。
・されど島から故郷へと帰った所で、信仰と迷信深き人々の世界はもはや彼女達の生還を受け入れてはくれません。
という塩梅です。
そして、じゃあ帰る場所と生きる理由を失ったこの数多くの女性を魔王はどうするの?という点が物語の本題となってきます。


というわけで、原作者のあとがきにもあるように基本は「楽しい、可愛い、ちょいえっち」のコメディ作品でありながら「でも、どこか真面目で泣ける部分もあり…」というドラマ性とバラエティ性の両立を図った良いとても良い作品だと思います。


絵の方もシリアスとコメディの描き分けや表情の豊かさなどが良く、緋賀ゆかりさんも負けじと腕を揮っているようです。
ただ、アクションの表現はやや苦手な模様。
ちなみに作画の担当は別ですが、同原作者の『まほろまてぃっく』のキャラクターをパロっている登場人物が居たりもします(笑)。