リヴァースキス

リヴァースキス (電撃文庫)

リヴァースキス (電撃文庫)




ある朝、目覚めると俺は美少女になっていた。
そして俺の体は未練を残して事故死したトモヨシという男に乗っ取られていた!
「じゃあ、こいつの願いを叶えてさっさと成仏してもらうか。」
と思いきや、こいつの願いは好きな子とキスをすることぉ?
しかも美少女になった俺にぞっこんとか言いやがる。
んなことできるか!別の方法探すぞ!



ってな感じに始まるトンでも設定、あり得なストーリーのドタバタ劇。
この設定からして明らかなとおり、本編も9割方アホでバカでくだらない話で占められています。
いますが、残りの1割で軽く驚かされ、不覚にもちょっと感動してしまったのも本当のところ。
それまでが本当にしょーもない展開を貫き通してきただけに、終盤の空気の激変っぷりは面白いものがありますねー。
と、ことその点に重きを置けばなかなか良いと言えますが、総論としてはやはりコメディはコメディなので、バラエティ番組を見る感覚で気楽に読める反面、読み物としてはどこか物足りなさを覚えるのもまた正直な感想です。


また、終盤の意外性の他にもうひとつ良い点がありまして、それというのも地の文が独特で面白いんです。
この作品は一人称形式で書かれているため地の文は主人公─善─の語りとなるのですが、ひとかたまりの文章の最後の「ある種余計な一文」に笑いを誘われることがしばしば。
たとえば、
(前略)赤子の手をひねるより簡単だが、着ない。
どうでもいいが、赤ん坊の手をひねるのは実際、可哀想で辛くてとても出来たものではないだろう。

など。
ってもまあ、例を挙げたところで伝わるものでもないと思いますが…。


というわけで、全体の雰囲気を掴むだけなら最初の10ページほどを読めば大体掴める判り易い作品です。
独特な作品なので一度軽く立ち読みしてから買うほうがいいですね。
俺は6月は他に読むべき新刊があったのに何でこれ買ったんだっけ?とちょっと後悔していなくもないです…。