カレイドスコープのむごうがわ 2

カレイドスコープのむこうがわ〈2〉 (電撃文庫)

カレイドスコープのむこうがわ〈2〉 (電撃文庫)

  • ココにうるうる :神田の決断こんな代償を支払うことにならずに済んだかもしれないのに。(246〜249頁)

自己犠牲は時に自己満足となってしまうけれど、神田の選択は正しかったと思いたい。


俗に言う霊感が強く、物の怪や成仏できない魂を祓う“祓い師”の仕事のサポートに欠くことのできない“同調者”の才がある高校生、神田道弘。
人と違う力にコンプレックスを抱きながらも、自分の中で織り合いをつけて“同調者”の役を果たしてきた彼。
ただ、どうしてもただひとつ尽きない悩みがあった。
それは、中学の時の同級生であり、彼が好意を寄せる友人─井上志帆─にその秘密を明かせずに隠し続けていること。
そして、その罪悪感に苦しみ悩んだ末にすべてを打ち明ける決意をするが…。



もっと引っ張るかと思いきや、もうカミングアウトしちゃうのかぁ。
と、表紙の折り返しにあるあらすじを読んでそう不思議に思ったものです、読む前は…。
最後まで読めば納得です。
いや、読まなくてもあとがきで納得です。
だって、この作品2巻で終わりですもの。


えええぇぇぇ、マジかよ!と。
はえーよ!と。
そう思いました。
作者自ら望んでの幕引きなのですが、如何せん一定以上の巻数を重ねるシリーズになるだろうと思っていただけに驚きました。
基本的に1話1話が別の物語である短編形式であり、中には死者と生者の橋渡しといった話もあるため、同レーベルの『しにがみのバラッド。』や『シゴフミ』などと近しいものがある良い作品でした。
なのに、2巻でもう終わりです。
正直、あまり納得いってません。


そして何より、2巻完結という早さ以上に格段の重きをもってして不満である点があります。
ずばり、結末。
どれだけ反芻して、どれだけ好意的に解釈しようとしてもこの結末は受け入れられませんでした。
比較的性格がネガティブなせいもあるかもしれません。
が、それにしてもやはりこれは…あんまりすぎでは…。
後日談は読者の想像にお任せします。希望ある再スタートを思い描いて下さい。ったってそりゃないよ、と。
何故わざわざ作品が完結する直前にどん底に突き落とす必要があったのか。
奇を衒って?ドラマ性が深まるから?
「解せん。実に解せん。余は不愉快じゃ!」
残り数十頁を残して9割ほど読んだ時点*1では、忘れていた1巻の時に抱いた好印象や「地味だけど良作」という認識を再確認して「あぁ、そういえばこんな良い作品だったなぁ」だとか「往く春のエピソードが良かったなぁ」などと感慨に耽っていたんですが…。
すげぇ台無し、マジに。


折角良い文章を書く人なのに、最初に出会った作品*2でこういったラストを見せられてしまうと、以後の作品も同じようなことになるんじゃないかと思い、手が出し辛くなります。
無論、勝手にブーイングしてるだけで称賛の声もあるかと思いますし、全体のコンセンサスは逆にポジティブなものかも知れません。
ただ、デビュー作からいきなり着地の難しい高難度な技に挑んだなぁ、とは誰もが思うんじゃないかなぁ。
個人的にはすごく勿体ないというか、悔しい想いがした作品でした。


あ、ちなみに結末を除けば、お薦めのシリーズです。
博打が嫌な場合は1巻だけにしておくってのもアリだと思います。
表紙買いの逆で「表紙で買わない、というかそもそも手に取らない」ということは少なくないと思いますし、僕自身そんなことは茶飯事ですが、少なくとも表紙のイメージから想像されるものとは少し相違ある趣きのある作品ですよ。

*1:最後の最後にあとがきを読むまで完結巻と知らなかったので、この時点ではまだ続くものと思って読んでいました

*2:本作がデビュー作なので、数ある既刊作品からたまたま本作を手に取ったという形ではありませんが