スプライトシュピーゲル 3

  • ココにジンときた :乙「行こうぜ。鳳一人じゃダメだ。オレたちが行ってやんないと。大事なときは、いつも一緒だろ、オレたち。」(250頁)

三人でひとつの彼女達だから…。


2巻にて、同事象を二局面から描いたシュピーゲルプロジェクト。
3巻はまた元の通り別々の物語が進行、スプライトでは
遂にMSSの内部にまで及んだプリンチップの手。
内部崩壊の危機と仲間の命の刻限が迫る過酷な状況。
武器を持ち、武器を用い、武器を揮うことで敵を阻止し排除してきた彼女たちが最大の敵を前に最後に取った行動は…。

とゆー物語が描かれます。


いやー今回はいままでで最高に良いですね。
何がどう良いって要は感動したよ!ってことなんですが、1巻2巻と時間を重ねて感情が移入してきて蓄積されたもんが一気に発露したよーな感覚。
とても貴いものを目の当たりにして、なんとかこれを守らなきゃという気にさせるようなそんな話でした。
1巻の読後ではまだ、人間兵器な女の子が銃やら何やらドンパチして暴れるだけのよくある作品で、この作品だけの強い個性といえば独特の文体・文章くらいなものでしたが、今回はちげーぞ、と。
もうそんなちゃちいもんじゃあねーぞって所まで洗練されてきた気がします。
と、いうのが主に三人を中心に見た物語の感想。
次はもう少しストーリーの全体像に。


まず、今回は前回のような都市ひとつが消し飛ぶ程の規模の危機ではありません。
スケールの派手さはないが事態の深刻さは当事者のMSSにとっては前回以上に深刻なのでは?という、言ってみれば地味にきつい事件。
(故にドンパチの派手さは控えめです)
更には主要人物の一人が死の危機に瀕し、事件解決までのリミットに焦り・急かされながらも冷静な行動が必要という難局。
そして挙句の果てには敵性勢力に対しての最大の優位性であった専売特許のアレまで失ってしまい…。
この緊迫感となかなか捜査の手が届かないもどかしさがたまらない。
そして仲間を救うために我が身の安全も厭わないMSSの面々がアツいっす。


ちなみに構成は全24時間を時間刻みで区切った人気洋ドラみたいなクライムサスペンスの作り。
素材はすべて小説誌に短編連載の形式で掲載されたものからで書き下ろしはなし。
短編の連載をまとめると1本の長編になっているというもの。
(書くの大変そー。実際大変だったと言ってるし…。)


でもって上述の内部に及んだ手の話ですが、仕組まれたというより勝手に花開いたとゆー避けようのない悲劇。
「あー、こいつが裏切り者なんだろうなぁ」と、恐らくほとんどの人が相当早い時点で察しがついたであろう意外性のない結末ではあるんですが、そうだと思いつつもそうであって欲しくないという読み手の心理を抉る様な話です。
この終盤までの悲壮さが辛いところですけれど、谷深ければ山高し。
最後の最後には最大級のグッドニュースがあるっつー浮き沈みの激しさがすごい好き。
てゆーか本当に、この最後の点に関しては驚きも良い所で半ば信じられないわけでして…。
MSSスタッフが一瞬の沈黙の後に事態を現実のものとして認識し、デスクをバンバン叩いて驚喜歓喜するシーンには共感せずにはいられない興奮ものでした。


尚、今回はこれまで「何の役にも立たないしむしろお荷物でしかない癖に一丁前に鳳に色めき立ちやがってこの小僧が、オメー一体何のために居るんだよ」と散々な言われ様だった(誰に?)冬真が大活躍。
影の主人公ともいうべき役割を担っています。
それからそれから、あとがきでは書き下ろしのコント的小劇場が10頁ほど展開されています。
4巻は発売時期は未定。
内容は2巻あとがきでの話の通り、書き下ろしでオイレンとクロッシングする長編となるようです。