人類は衰退しました 2

人類は衰退しました 2 (ガガガ文庫)

人類は衰退しました 2 (ガガガ文庫)

  • 今回の名場面:「あはは……」わたしは笑いながら、ぼろぼろ涙を流しました。あの日、森で見た雨滴よりも大きな粒を落としながら、泣きながら、わたしは妖精さんの服の裾を掴みました。「……たすけて……」(中略)「だから、助けてくださいよう……!」(127〜128頁)



わたしたち人類がゆるやかな衰退を迎えて、はや数世紀。
既に地球は“妖精さん”のものだったりします。
ただ、「支配者」というにはあまりにも…ねぇ?



話題の小説第2巻。
今回は1巻とはガラリと趣きの変わった内容に驚き。
のんびりのほほんファンタジーの風情たっぷりだった1巻とは裏腹に、見た感じ雰囲気やテンションは違ってないのにその実とってもシリアス。
二話構成のうちの一話目は、1巻のまったりムードですっ飛んでいた「妖精に悪意は無くとも結果的に人間にとって驚異的な害悪になる可能性があることを失念してはならない」事を改めて痛感させられる話。
基本的なノリは妖精さんの悪戯に起因するおもしろおかしいいつもの調子ですが、よくよく考えればとても空恐ろしい内容。
とりわけ後半からの怒涛の切迫感と焦燥を誘う失踪感は冷や汗モノです。必見。
何が起きてどうなるのか、あまり突っ込んだあらすじにまで触れるとネタバレになってしまい差し障りがあるので触れられませんが、著者の世界の奥深さを垣間見た気がします。


でもって二話目、こちらは一章のような深刻さは伴いませんが、それでもやはり1巻の印象と比べるとなんともはや、キリリとした面持ち。
そして、「無限ループって怖くね?」
更にはやおら哲学的な話にまで飛躍しており、著者が何を書き何を伝えたかったのか、自分は本当にきちんと理解できているのかいまいち自信が持てなかったりします。
もう一度くらい読み直してみるのか良いかも知れないなぁ、とそう思うほどにふか〜いお話。
そして面白い。


ただ、2話目に関してはどうしてもループ部分に冗長さを感じずにはいられなかったのも正直なところ。
そういった点では1話目のインパクトが強すぎて2話目が若干霞んだかも…。
(1話目は分かり易いストレートなインパクト。2話目は噛めば噛むほど、という性質の違いがある物語なので単純に比較できたものでもありませんけど…)
ちなみにこの二話目で、長く療養中だったかの「(おじいさんの)助手さん」が現場復帰、初登場。


相も変わらず表紙から想起させられるイメージと作品の本質とのギャップが良い意味ですごく、今回は特にその感じが強いです。
とても読み応えある1冊ですので、まだ既刊が2冊で済んでいるうちに是非。
おそらくこれ、ガガガ文庫における『キノの旅』になれるであろう作品*1
ゆえに、3冊4冊では止まらないと思います。

*1:断るまでもないと思いますが、作品の類似性などを指してのことではありません。内容は似ても似つかないと思います。電撃と言えばキノ、ガガガと言えば人類は〜といったようなそのレーベルの万人向けオススメ作品&看板タイトルになるだろうという意味での比喩です。それにしても『人類は衰退しました』ってタイトルはなかなかに面倒。何か良い略称はないものでしょうか…。