狼と香辛料 6

狼と香辛料 (6) (電撃文庫)

狼と香辛料 (6) (電撃文庫)

  • 今回の名場面:コルは、麻袋に乱暴に手を突っ込んで、引き出した。その細い手に、力いっぱい、あるものを握り締めて。(以下ネタバレにつき割愛)(304頁〜)



漫画にアニメと幅広い展開をみせる人気シリーズ第6巻。
今回はこれまでとは趣きを異にし、珍しくもロレンスが金儲けに足を突っ込み危ない橋を渡ってホロを呆れさせ助けを借りることがありません。
ロレンスにとっての事件といえばホロの機嫌を損ねて口をきいてもらえなくなった事くらいのもの。
これまでの旅路を思えばきわめて平穏無事な数日を過ごすことに。


著者自身あとがきで「今回は特に商売の要素が少なかったと思う」と語るとおり、今回はそっちの話はお休み。
メインをホロとロレンスの痴話喧嘩?に据えつつ、ひょんな事から知り合って面倒を見る形になった少年との短い船旅を描く。
そして耳にした聞き捨てならない噂話、これまでとは様子を違えた新たな旅の始まりを迎え、以下続刊。


主な登場人物はホロとロレンスの他には二人、文無しの放浪少年コルと川下りの名人ラグーサ。
舞台も珍しく村や町に入ることはなく、ほとんどが船の上。
そしてその船も川を下る小規模なものであり、期間もわずか1日やそこらのことであるため地理的にもほとんど移動なし。
動かず騒がず巻き込まれずの穏やかな1冊となっています。
尚、詳細はネタバレにつき明かせませんが、この巻で今後の旅の様相を一変させる大きな変化を迎えます。
その他はこれといった事もなく、6冊目にして初めてドキドキとハラハラのない落ち着いた雰囲気を楽しむことができ、たまにはこういう『狼と香辛料』もいいな、と思わせる風情。


でもってロレンスは相変わらずホロ相手に振り回されてばかり。
ホロのことならもう何でもわかったかのような気になっていたことが災いして大失敗。
口は災いの元、失言によりホロを怒らせるばかりか同行者に呆れられ、恥までかく始末。
今回はコル相手に師匠のような振る舞いを見せる彼ですが、その実ちっとも成長してない気がします。
頑張れロレンス、ホロとの旅が終わるまでこの調子じゃあかっこがつかないよー。