神様家族Z

  • 今回の名場面:「うん、また明日ね」(323頁)

無感情で無機質な欠陥天使に感情の芽生えが見受けられたシーンっすね。


MF文庫Jの中でも名のある作品であり、アニメ化・漫画化もされた『神様家族』から1年半。
長き沈黙を破り、あの一家が帰ってきた!
今度の佐間太郎は見習いなんかじゃなく、立派な神様!(但し仮免)
また一人新しい家族を迎え、人間を救うための神様(仮免)のドタバタ生活がまた始まる。



というわけで、神様家族最終巻で言ったっきり待てど暮らせど出てこなかったシリーズの続編がいよいよ登場しました。
前作で佐間太郎たちが出逢った人たちは彼らのことを覚えていないというパラレルワールドで神様としての新スタートを切った佐間太郎とテンコのホームコメディ。
ふざけているかのような独特な文章と一転して真面目でシリアスになる終盤の文章とのギャップもそのままに、新キャラを加えての神様ワールドが展開されています。


今回のストーリーの主軸は辛い記憶・悲しい記憶との付き合い方。
嫌なこともひっくるめ過去の経験すべてがいまの自分を形作っていることを忘れ、辛い事や悲しい事から逃げたりそれらを捨てたりしたらどうなってしまうのか、そんな感じに深い話です。
もちろん、平素は今まで通りのばかばかしさ溢れるアホアホムードが支配してますけどね。


ちなみにこちらも今まで通りに、神様になっても佐間太郎は何の“力”もなく、奇跡が起こせるわけでもありません。
そしてやっぱりZでも事態を暴力(=相手を屈服させる事)で解決しようとはしません。
ですので、全体の8割9割が軽いノリでありながらも真ん中に芯が一本通ってる所は相変わらずです。
この辺りは磐石のものとして信頼できる作品ですね。


ただこのZシリーズに関しては作者自らが乗り出したものではなく、作者は「前作で完結していてすべてを書き終え、書き残しはない」と思っていたのが、読者からの強い要望で気が変わって続編を書くことにしたという背景があります。
そのためか或いは読者の錯覚か、どことなく前作ほどのインパクトや感動…端的に言えば「良さ」がないように思えます。
とはいえまだシリーズも始まったばかり。
前作も最初からそれほどのものだったかと言うとそうでもありませんでしたし、今回の話も一応の終わりを迎えてはいるものの元凶たる悪魔のことなどまだ未決着の部分がありますから2巻以降次第だとも思います。


それはそうと、メメのキャラ変わりすぎじゃね?