魔物 上

魔物〈上〉

魔物〈上〉

ロシアマフィアとヤクザの麻薬取引の情報を掴んだ麻薬取締官─大塚─
県外からの応援も要請し、万全の態勢で望む麻薬取締部
だがしかし、ブツを押さえたものの肝心のマフィアを取り逃してしまう。
そしてそのロシア人は銃弾を身体に受けながらも素手で警官2名を殺害し、街に消えた。
常人の所業とは思えぬ現実に新種の薬物の存在も疑われたが、実際には…。
(帯あらすじから抜粋、改変)


知らぬ人は居ない作家、大沢在昌さんの新作長編上下巻の上巻。
今回は珍しくオカルト的な要素を多分に孕んだ非現実的サスペンス。


そう、読んでまず最初に抱く印象としてあまりにも非現実的すぎる気がします。
ファンタジーやSFなど突拍子もないフィクションが大好きなやつの言う科白じゃあないのかも知れませんが…。
ロシアの宗教・信仰に関する精緻な書き込みや現地警察やヤクザ・麻薬取締官など外堀を埋める構成や知識はリアリズムは普段の評価に違わぬ鉄板ぶりがあります。
にも関わらず、外堀がこれだけ現実的に固まっているのに中の陣容だけどうしてこんなにぶっ飛んだ話になっているんだ?というちぐはぐさが、非現実的展開を悪いものと印象づけている感じでしょうか。
そこだけポツンと宙ぶらりんになっているようでどこか収まりが悪いです。


と、のっけからケチばかりつけましたが、話のもっていき方・展開の妙、そして大塚視点でしか描かれない事で生じる事態への不透明さからくる未知や半端な理解の解答への欲求によって、やはり物語にはグイグイ引き込まれます。
そうしてグイグイ引き込まれ辿り着いた先がオカルト?という肩透かしを食らったような印象はあまり良い物ではありませんでしたが、それ以外はさすがの大沢さんと言えます。


まあ、それもこれもすべて道半ばでの仮の評価。
あとは下巻を読んでからですね。