砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない 上・下

砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない 上 (単行本コミックス)

砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない 上 (単行本コミックス)

砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない 下 (2)

砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない 下 (2)

直木賞受賞作家、桜庭一樹さんの名が広く伝わり始めるきっかけとなった同名小説を漫画化したもの。
小説版はそれまでライトノベル専門であった桜庭さんが、いずれ一般文芸へと飛び出すだろうと多くの人に予感させたであろう一作。
今回はそれだけの注目作が漫画されました。
この種のメディア展開には当然ついて回る不安というものがありますが、本作に関しては作画に杉基イクラさんの名前を確認した時点で懸念払拭。
期待の高い作品だったわけで…。


で、実際蓋を開けてみてどうか。
結論から言えば期待通りの出来です。
原作に思い入れのある人にも薦められます。
その逆に、原作を読んだことがない方には間口の広いこの漫画を機に、是非小説にも触れて欲しいですね。
単行本の方はどうか分かりませんが、文庫で200頁程度と文章量はかなり少なめな作品ですから簡単に読めると思います。


と、真っ先に推奨コメントばかりしてしまいましたが、肝心の作品はというと…。
実際のところ読後感の悪さには定評があります(笑)。
最悪だ!というものでもありませんが、良いか悪いかでざっくり分ければ後者。
どうしてもしこりのある読後感になるのは否めませんけれど、それ故にとても正直な作品であり、それが良さでもあると思います。
また、ミステリー作品のような緻密さを兼ね備えているのも魅力のひとつ。
上巻の至るところに主人公のひとり─海野藻屑─のすべてを知る鍵が散りばめられています。
そのため、初見と二度目以降ではまったく別の作品に見える面白さがあります。
胸の内の深いところを抉りこんできますが、ぜひこの物語と向き合って欲しいです。


ちなみに作画は冒頭の通りなので、文句なし。
視覚でしか得られない衝撃も漫画ならでは。
技術も表現もベストといえるものでもって原作世界を表現されているかと思います。
桜と杉、異色のコラボをご堪能下さい。