銃姫 9〜It is Not to be “Now”〜

  • 今回の名場面

「ネリ、シャ…。も…う…、…」
ネリーシャは、手を握って何度も頷く。
言ってしまおうか。
チャンドラースは、心に決めた。
今なら言っていいだろう。ここなら、誰も聞いていない。
「……っか、…………れた…」
生まれて初めて、チャンドラースは弱音を吐いた。
「もう、────やす、み……た……い……」
(310〜311頁)
目頭が熱くなるのを抑えることが出来ない。
ここの他にもうひとつ、冒頭のカラー扉絵にまでなっている名場面があるのですが、あえてこちらを挙げてみました。


ついに相対した闇の属性王と火の属性王。
宿敵との対峙による激突はもはや避けては通れぬ道。
だがしかし、属性優劣の法則で火に劣る闇のセドリックではアスコリドに勝てる道理はない。
そして、火に優位を持つ水の属性王が絶えたのは世界の誰もが知る不変なる真実。
既に火こそが最強であり、世界にアスコリドを、スラファトを止める手立ては残されていないかに思われた。
だがしかし、そこへ投じられた一石の波紋。
「なぜ、竜王ガリアンルードだけを執拗に滅ぼそうとしたと思いますか?」
運命の歯車はいま、宿命の歯車へと姿を変えた!



と、熱っぽく煽り文めいたあらすじを書いてみましたが、実際にはこの巻はチャンドラースの巻です。
ベゴダの彗星墜つ!
英雄が決死の思いで放つ最期の楔を見届けよ!

と言った方が簡潔でよほど良いかも知れません。
8巻での壊走から宝石谷での最終決戦まで。
ついに全面衝突した流星軍とスラファトの戦いの一部始終がこの巻で終わります。
かねてからの懸案であったスパイ問題も明らかに。
そしてスラファトを絶対悪として一方的に断ずるでもなく、しかしあえて「チャンドラースの正義」を描き切った本の厚さに負けない内容の厚み。


尚、もはやいつもの事ですけれど、9巻始まって暫くはTo be continued的終わり方をした8巻ラストと直接的につながる場面には入りません。
セドvsアスコリドの行方は6・70頁を過ぎた辺りからとなります。


英雄の大仕事、灰海のこれから、暁帝国の今後の動向、そしてセドリック、アン、アスコリド…。
いずれにしても既に終局への階段を登り始めている観があります。
また、事ここに至ってついに高殿さんもあとがきに「終わる終わる言ってなかなか終わらず、なんか詐欺みたいになってきたのでここはあえて「終わりません」と言っておこうと思います。」と残していますが、同時にプロット上ではもう完結しているとも語っています。
個人的には、ライトノベルと称されるジャンルにおけるサーガ的ファンタジー作品としては他の追随を許さぬイチオシ作である『銃姫』が、いよいよ完結してしまう事には万感の思いがありますが、今は一刻も早い発売を待つばかりです。