とらドラ! 7

とらドラ!〈7〉 (電撃文庫)

とらドラ!〈7〉 (電撃文庫)

  • 今回の名場面

「……もう、やだ……」
本当に細かい奴なんだから。
「……ほんっとに、やだ……」
そのくせ、自分はあんな非常識な登場をしておいて。なんだクマって。
「……やだ……」
それでいつまでもグズグズして、間に合ったのだろうか、ちゃんと。
「……や、」
ちゃんと実乃梨に、想いを、伝えら
「……」
いやだ。
(238〜239頁)
嘘だ!(鉈女的に)
傍目に(といっても読者ですが)その想いは、嘘だ!と思わずにいられなかったこれまでの大河。
そしてここで「おまえ、やっと気付いたのかよ…。」と。
ようやく、という思いが一塩です。


漫画化に続いてアニメ化が決まった今の電撃を代表するラブコメとらドラ』最新刊。
冬の始まりに起きたすみれの留学、北村大失恋騒動から2週間後。
大河の停学も解け、一大イベントのクリスマスを間近に控えた12月の話。
そして、新生徒会長北村発案のイブパーティを境に物語は大きな転換点を迎える。



これまでは夏旅行や文化祭などひとつのイベントの始まりから終わりまでを描きつつそれにあわせて大河と竜児の物語を展開させ、その巻ごとにストーリーに一区切りがついてきました。
ところが今回はイベントの方は一連の流れを完結させるものの物語は途切れることなくトベコン*1の形でもって収まりの悪いまま次巻へと引き継がれます。
この終わり方、そしてあの内容。
もはや2ヶ月以上は待てないですが、8巻はすぐに出てくるんでしょうか…。


兎にも角にも波乱の第7巻。
大河と北村、竜児と実乃梨。
段々と距離が縮まっている観があり万事うまく噛み合っているようでいて、その裏で何かが静かにずれていっている予感と居心地の悪さを孕んでいたストーリー。
それが今回の事でカチリと噛み合ったか、或いはこれまで綻びをそのままにしていたしわ寄せから歯車は遂に崩壊したか。
そのどちらとも言えるような印象があり、当人よりも周りの他人の方が彼らの事に、その想いに、気付いている歪な恋模様が大きく姿を変える事になりそう。
この辺はネタバレと紙一重ハラハラ状態なのであまり長々詳しく書けないのですが、いずれにしてもそろそろ物語の終わりも見えてくる、そんな感じの今回です。


尚、7巻ともなると改めて言うべきことでもありませんが、前半はいつものバカでアホでしょーもない話。
会話も地の文も良い意味で変わらぬ調子のくだらさなたっぷり感を醸し出しています。
そしてある時を境にスイッチが入ったかのようにシリアスに変調するのもいつも通り。
但し今回は上述の通り軽いノリ→重い空気→ハッピーエンドの周期通りにならず、中盤からの重い空気を引き摺ったまま終了。
読者的にはとても落ち着かないです。


ちなみに今回はこれもいつもとは違って、暴言暴力がなりを潜めたかなり珍しい大河が居ます。
そして竜児はこれまで以上に思考のループに陥って自己完結したりしなかったりのウダウダ脳内思考。
かと思えば一度踏ん切りついたら実乃梨に執拗に食い下がり…(それが良いと信じての行動ですが)とあまり良い所がないかも。
(ラス前のシーンで途中までは良いトコみせたものの結局はああですし…)
それからどうでもいいことではありますが、表紙の大河が随分と印象の違うイラストになっています。
意図してのものだとしたら感心せずには居られませんが、どうなんだろう。


と、いったわけで一連のストーリーが完結しない&今回の竜児はあまり好きじゃないせいでとらドラで初めてスカッとしない巻となっている気がします。
ただ、物語は個人的にとても望ましい方向に進みそうな気配がありその点がとても好印象。
何にしても8巻が早く出ないことには!

*1:To be continuedの略