オイレンシュピーゲル 3

「初めて仕事で人を殺したときのこと、覚えてるか?」
涼月・陽炎・夕霧、三人が揃いも揃って初出撃時の記憶が綺麗さっぱり欠如していることに改めて疑問を抱く涼月。
何故記憶がないのか。
消されたのか、封印されたのか。
そして、記憶を弄らなければならないような何がその時起きたのか。
彼女たちがMPBのケルベロスとしてのスタート切った原点に秘められた謎に迫る。



4巻読む前に3巻読んでないじゃん…。
ということで何ヶ月も前に半分くらい読んだきり放置していた3巻を大急ぎで読了。
そして後悔。
改めてシュピーゲルプロジェクトの相関関係を痛感。
オイレンの3巻を読んでいないとオイレン4巻は元よりスプライトの4巻を読む上でも必要な情報の欠如が少なくない。


とまあ、そんな個人的な事情はさておき第3巻。
2巻での大騒動─アンタレス事件─から程ない日常の光景。
くそったれの世界はくそったれに見合う程度にはそこそこ平和。
都市の存亡が問われるほどの事件はなくてもMPBの仕事は尽きず、任務は絶えない。
そんな“いかれた日常”を過ごすケルベロスの三人を3話にわけ、1話ごとにメインスポットの当たる人物を変えて描いた幕間的な短編集といえる巻。
無論各話の内容は完全に断絶されたものではなく、それぞれが後の展開へと繋がる要素を秘めてもいます。


そして三人は各々過去への扉を開くきっかけを、或いは既に扉を開くわけですが、抱いた感想もそれぞれ。
この扉は開けない方が良いのでは?とある種の恐怖を抱く者もいれば、ひとつの安堵を手にする者も。
てゆーかやたらめったら涼月にベタベタな吹雪と彼女の間にそんな過去があったとは!!!
マジかよ!と。


また、この巻で改めて何故本編の特甲児童は女子ばかりなのかについて確認。
日常の中に戦闘行為が伴う治安組織には装備と戦闘力の低い女子の特甲を主に配置(吹雪や水無月は例外的存在)。
逆に戦闘行為こそが日常たる軍組織にはより高度な特甲能力を持つ男子を配置し、戦場へ派兵。
まあ、単純に女の子が主役の方が…という事情もあるのでしょうけれど、こうして見ると納得の構図。
そしてこの巻ではその男子特甲児童も登場し、更には高度兵装“特甲レベル3”というより破壊力と危険性を備えた転送機能が物語に上がってきます。


次第に明るみになる三人の過去。
特甲児童が生まれた経緯と、その存在が秘める可能性と危険性。
起こる事件こそ小規模なれど、一連のストーリーを繋ぐ上では欠かせない事柄が多く、シリーズのキーとなっている巻とも言えるかも知れません。
これからシリーズを読もうという人は間違っても1234・壱弐参肆とは読まず、1壱・2弐・3参・4肆(壱1・弐2〜でも可)と読んでいくようにしましょう。
俺は結果的に1壱・2弐・34・参肆となってしまい軽く後悔しています。