シャイナ・ダルク〜黒き月の王と蒼碧の月の姫君〜 3

  • ピックアップ!名場面

筆をとるガレット
「そうそう。この前メイドさんと一緒にねこまんまを食べた。
(中略)
お願い…誰か…誰か助けて…。」
 (79〜82頁)


頑張らなくちゃ頑張らなくちゃ頑張らなくちゃ頑張らなくちゃ頑張らなくちゃ頑張らなくちゃ頑張らなくちゃ
「大丈夫!平気平気……。
へいき………。」

頑張らなくちゃ頑張らなくちゃ頑張らなくちゃ頑張らなくちゃ頑張らなくちゃ頑張らなくちゃ頑張らなくちゃ(111〜113頁)


今回は一連の流れを汲んで2箇所。
名場面といっても感動的という事ではなく印象の強かった場面ということですが、後者は背筋が寒くなる思いまで。


3月に特装版のみが発売され通常版が待望されたシャイナの通常版最新刊。
魔王の提案により、二人の姫を頭に島の人たちによる治世を目指しだした新造国家シャイナ・ダルク。
だがしかし、ひとたび人々が気力を取り戻すと起源が歪んだこの国には問題が山積していた。
なかでも出身がバラバラであることによる文化や思想の違いによる摩擦は看過できぬ事態となっている。
そんな折、魔王が祭りと称して魔獣狩りの開催を告げ…。



と、いうわけで魔王が一線から退き全権が国民に委譲されて久しいシャイナ・ダルクが新たに抱える問題と思いを分かり合えぬ双月姫を描く今回の話。
前回でその苦難の生涯が明らかになったクリスティナですが、蓄積された毒による苦しみも幾分楽になってきており、彼女個人の問題は半分かた解決した模様。


しかしその一方でガレットが何やら…。
傍目(クリスティナなどの視点)にはいつもハツラツとしておりリーダーシップを存分に揮う彼女。
しかし神の視点(読者視点)から覗き見れば、彼女もまた重責に潰れかけたか弱き女性の一人であることを知る。
かといって弱音を吐くようなガレットでもなく、また、クリスティナをお荷物と断じて協力を仰ぐこともしない。
一人気を吐き奮闘する双月の片割れ。
これではまるで一方が輝く時にはもう一方が落ちる太陽と月。
共に光り輝く双月の姿には程遠いわけでして…。


そんな感じで先行きの明るくないシャイナの内情。
さりとて放任主義を謳う魔王もこの現状を把握しており、その歪みを解決することこそがこの国の今後にとって不可欠であることは承知のこと。
となれば、彼がまったく何もしてくれないわけはなく、そこで魔獣狩りのお祭りを開催ということに。


とまあここまではとても良いのですが、ぶっちゃけてこの魔獣討伐が浮いてるというか非常に微妙な事になってます。
物語の展開や祭りの内容などなど基本的なところはここだけ他と違うという事はなく、変わらずに良いものではあります。
気になったのはこの魔獣狩りに際して当然のことのように会話に「生命力が10000」「防御力が30%低下」「特殊技を使ったことで〜〜」などといったゲーム感覚の言葉が飛び交っている点。
魔獣狩りといっても実際には数百人を動員しており、戦も同然のこの戦い。
戦であるなら尚の事相手の戦力などは単純に数値化して測れないのが常であり、それをどう攻略するかが醍醐味であると思うわけです。
これだと軍師として才覚を発揮することが予期された(そしてやはり実際に今回その才を揮う機会が回ってきます←ネタバレ)クリスティナがここで指揮を揮うとまるでゲームのプレイヤーのように見えてしまって軍師という感じがしなくなってしまうような…。
この特殊な光景が今回の祭り限定でのことなら良いですが、この先物語上もし諸外国との戦争などが起きた際にも今回のような仕様での描写が標準になるのだとすると、深刻なはずの話が滑稽なものになってしまいそうな懸念があります。


まあ、とりあえず他の面はとてもおもしろく魅力ある作品なので細かいことは気にするな、という事でしょうか。
ひとまず4巻以降はどうなるのか見ていきたいと思います。