とらドラ! 8

とらドラ!〈8〉 (電撃文庫)

とらドラ!〈8〉 (電撃文庫)

  • 名場面ピックアップ

「……ずっと訊きたかったけどさ。おまえの、その『みのりんは竜児を好き』っていう思い込みは、一体どっからきてるんだ?見てたらわかるよか、そういうのナシで」
「聞きたい?」
(中略)
「じゃあ教えてやろう。──そう信じるに足る理由が、私の中に、あるからよ」
(93〜94頁)
ここまで言われて何で分からないかな、この男は…。


イブの夜、実乃梨に気持ちを伝えることすら拒絶され言外にフラれた傷心の竜児。
でも本当は実乃梨も竜児の事が…。
それでも竜児の想いを受け入れないのにはもちろんワケがあって、そのワケだって傍目には筒抜けなのに本人はそれを絶対認めなくて…。

見せ掛けだけの「何もかも上手くいっている」関係は唐突に瓦解し、あっちでこっちで気持ちがぶつかり合う修羅場模様。
小さなきっかけで大崩壊、激動向える最新刊。
※注:感想が整理し切れてないのも本編がカオスだったから、という事でお許し下さい。
以下、グダグダ。


鈍いことは罪。
全然周りの見えていない竜児は心の袋小路に迷い込む。
そんななーんにも分かってない竜児に対して苛立ちを隠さない亜美。
一方、実乃梨は自分に嘘をついて仮面を被り続け、その事がまた一層亜美を苛立たせ…。
ところで何でそこで亜美が苛立ってるの?
おいおい、今更そんな野暮な話はなしだぜ。


さて、今まで憎まれ役を一身に引き受けてきた亜美が最近は段々と気の毒な立場になっていく流れがありましたが、今回は特に…。
一番状況が見えてるだけに損をしている感じ。
読者の代弁者としてはほぼパーフェクトな役割をしてくれているんですが、その役をやりきったからとて報われるわけでもなし。
どうしても竜児・実乃梨が加害者で亜美(と大河も?)が被害者という構図に見えて仕方ないです。


と言ったわけで、イブの一件から2週間ほど後、年が明けての新学期が今回の話。
竜児らの学校では1月に2年生は修学旅行へ。
3年になったら進路の関係でクラスも別々になってしまうため、このイベントが最後の機会と考え気を張る竜児。
告白することすら許さず拒否した実乃梨に真意を確かめようと気合だけは一人前。
しかしいざとなると「イブは何もありませんでした」と言わんばかりにこれまで通りに振舞う実乃梨の態度に戸惑いは更に深まるばかり。
ちっとも分かってない竜児も大概ですが、なかった事にしようと押し通す実乃梨も結構残酷。
(但しその辺は上述の通り読者の代弁者たる亜美がきっつーい指摘を入れていますが)


そして一方イブに竜児がフラれた事を知った大河は態度と姿勢を一変させ、何とか実乃梨と竜児がくっつけるよう努力をし始めました。
最初は自分と北村の事が最優先であれほど投げやりだったのに…。
ただ、本人がどうした所で実乃梨は大河のために身を引く決意を、大河は実乃梨のために身を引く決意をしているすれ違いの状況では努力が実を結ぶわけもなく…。
互いに自分勝手になれない優しさがかえって苦しみを増している哀しい話ですね。
で、それを傍目に見ている亜美がイライラしている、と。
そしてアホの竜児はなんでこんなことになってるんだ?と自分のせいなのに気付かない、と。
ひでぇ話だ(笑)。


そんなこんなで今回は酷い荒れ模様でした。
舞台の雪山同様、まさに天候にたとえると吹雪による嵐。
単純にただひとつ「竜児が鈍感朴念仁なこと」だけが原因でここまでグチャグチャになってしまうものかという様相を呈してます。
今回は珍しく大河が一歩引いて陰に回る立ち回りをしていてさほど目立たないのですが、その分亜美と実乃梨が凄いのなんの…。
特に実乃梨はアレ、キャラ変わりましたか?と言わんばかりのキレっぷり。
自分の気持ちと親友を想う気持ちの板挟みに悩まされて相当キテいるご様子。


そして今までそれと分かる雰囲気と話の流れこそあれ、大河の口から「竜児が好き」と告げられることなくここまできたとらドラ
それが今回ついに言葉という形でハッキリと形になったことで「ようやくか」と安堵にも近い気持ちが湧いてきます。
まあ、そこだけなんですけどね、今回の美点は。
他はもうネガティブな展開ばかりで大変な巻でした。
いつも前半だけはコメディ全開で通し、後半ガラっとシリアスに入る構成も今回ばかりは不発。
割と序盤から全面的にシリアスモードでこれまでとちょっと趣きの違った感じ話になっています。
でもってこれも初めてか、今回は1冊でイベントが片付かず「修学旅行編」は次巻持ち越しの結果。
とりあえず9巻はかなり早く出るそうなので一安心ですが、激動劇的な展開がケリを付かずに持ち越しになっているので座りどころが悪いです。
はやーく、次をぉぉぉぉ!