人類は衰退しました 4

人類は衰退しました 4 (ガガガ文庫)

人類は衰退しました 4 (ガガガ文庫)

  • 今回の名場面

「・・・・・・後始末はうまくやらんか」
祖父はにやりと笑って、
「未熟者め」
こつん、と軽く拳固で頭をつつかれます。
(250頁)
おじいさんと言えば叱ってばかりの印象が強い御仁ですが、今回は珍しい反応。


1巻が比較的陽気に、2巻3巻がそれぞれの色を出しつつ少し怖さを含んだ調子にとその巻ごとに違った色を見せてきた本シリーズですが、今回は久しぶりに1巻の頃に戻ったような気分になります。


ガガガ文庫で唯一継続して読んでいるこのシリーズも4冊目に入りました。
今回は3巻のような緊張感・焦燥感や不安感をかきたてる展開はなく、のどかで愉快な様子。
しかし「わたし」がおかした失態は相も変わらずスケールが大きく、生態系をひとつ破壊してしまいました。
なかなか完璧で優雅な調停官にはなれないのです。


4巻は2本立て。
ひとつめは、クスノキの里が最近直面し始めた食料不足を打開するために妖精さんが供給し始めてくれた「妖精社」製の品々(缶詰などなど)がどこでどのように生産されているのか調査に赴くお話。
例の長官の再登場やアレが喋ったり動き回ったり、「わたし」の断髪させられた髪がカオスなことになったりと比較的笑いを誘う要素が強いエピソード。

ふたつめはここ数ヶ月でクスノキの里一帯の人口密度*1が急激に増加したことに端を発する疎開のお話。
楽しいことがあれば妖精は自然と集まり増えていく。
楽しいこと=おやつがもらえること
おやつを定期的に妖精に供給している人=わたし
ということで、増えすぎによって妖精社会に生じた問題の解決を図るためにも数名の妖精を連れて「わたし」は過疎地へ単身赴任させられることになるのでした。
そしてここですんなり移住先での生活が進むわけがなく、非常事態に直面。
非常事態だから、というのを理由に過干渉する調停官の「わたし」。
それがいつしかあんなことに・・・。
まあ、誰だって一度は君主の座についてみたいものですよね。
仕方ないよね、だって人間だもの。
この話もかなり面白く、個人的にはこっちが今回のお気に入り。


分量は1本目と2本目ほぼ同等。
来年には新展開もあるかもしれないとのこと。
まだまだ続くようで何よりです。

*1:この世界における人類は妖精なので、ここでの人口密度は妖精密度を指す